- 高校野球
2020.10.26 10:00
リリースでは上から叩く 縦回転の153キロストレートがうなる 加藤翼(帝京大可児高)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 高校生編】
甲子園で行われた合同練習会。加藤に不運が襲った。
フリーバッティングでマウンドに上がる直前、ゲリラ豪雨が激しくなって急遽、練習は室内練習場へ移動になってしまったのだ。結果的には甲子園のマウンドに上がることさえ叶わなかった。
だが、ここからが加藤の真骨頂だった。先頭打者だった大阪桐蔭の強打者、西野を空振り三振に切って取った。結局、打者5人に対して2奪三振。安打性の当たりは1本のみ。十分にアピールできたのではないか。
加藤の成長は高校の田中裕貴総合コーチが大きな役割を果たしたという。田中コーチは近鉄、オリックス、ヤクルトで投手として在籍したプロ経験者。田中コーチはフォーム改造を進めてくれた。
現在のフォームは左足を踏み出すと同時に左腕のグラブを前方に出す。オリックスの山本由伸に似ているもの。
「入学当初は横回転の投げ方となっていて、ブレていた」という。
1年秋の県大会が終わった後に、田中コーチから、左手を上げることを勧められた。やってみると、翌日から球質が変わったというから、ジャストフィットだったのだろう。
本人の投球のイメージは「上から叩く」。 高い位置からリリースされるので、身長以上にボールの角度がある。右腕は縦回転で振り下ろされるからスピンも多く、ストレートは打者の手元まで伸びてくる。ストレートで三振の取れる藤川球児のボールの球質だ。
「筋肉質な体をしている。体のバランスがいい。躍動感やしなやかさがある」
体の基礎部分を褒めるスカウトがいる。だが、入学当初は細く力強さがなかったそうだ。ストレートの球速もせいぜい130キロ。そこから筋力をつけ、ストレッチで柔軟性を養った。体重は60キロから75キロに。体幹も鍛えられ、バランスも増した。
冒頭の合同練習会にも劣らず、岐阜の独自大会でもインパクトを残した。
指にまめを作っていて、準々決勝は8回からの登板だった。リードされていて、最後だと思ってめいっぱい投げたそうだ。150キロ台を連発した。
「全力を振り絞って腕を振った。ストレートの速さは日本一になるつもりでやってきた」
最後のボールは自己最速タイの153キロを出した。
「持ってるモノは抜群。高めに来る球は(打者が)全部振る。あれを膝元に投げられたらプロでも通用する。下半身を使えるようになれば、とんでもない投手になる」
「特徴はスピン量が多い直球。打者は球速以上に速く感じると思う。シュート回転もしない。ブレーキのかかったカーブも良い。山本由伸投手(オリックス)みたいだね」
まさに原石、というスカウトが多い。
絵を描くことが得意で、将来は画家になりたい、と思ったこともあったという。そんな変わり種が合同練習会を終わった後の会見で、力強く宣言した。
「小さいころからの夢であるプロに入って、力をつけて球界を代表するような選手になりたい。明日から夢に向かって頑張っていきます」