- 高校野球
2020.10.22 14:56
大学進学から一転、プロ志望へ 公式戦無敗の高校ナンバー1投手 高橋宏斗(中京大中京高)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 高校生編】
ドラフト20日前に大きなニュースが球界に飛び込んだ。中京大中京の高橋がプロ志望届を提出する、というもの。慶大のAO入試が不合格で、当初から伝えられていた大学進学が叶わなくなったのだという。
本人にとっては残念な未来図変更だろうが、プロ野球界にとっては逸材を4年早く迎えられる絶好機。いいニュースになった。
高校生投手で言えば、明石商の中森と双璧をなす世代のトップランナーだ。
昨秋の明治神宮大会で全国区デビュー。150キロを連発して優勝した。県大会から明治神宮大会の決勝まで12試合に登板し、うち8試合に先発して8完投5完封を記録した。完封された明徳義塾の馬淵監督は「ストレートは高校時代の松阪より上」と絶賛した。
中止になったが、センバツは優勝候補にも挙げられてもいた。夏の交流戦、智弁学園と延長10回を戦って勝利を収める。この頃には兄が在籍した慶大野球部への進学がほぼ決定的で、それを前提として周囲は進んでいた。
大学進学を念頭にしての、これまで。本人も、そのつもりで準備をしていたに違いない。自粛期間中は午前午後ともスケジュールを決めて行動をして、プロテインを増やすなど食事も見直した。体重が数キロ増えたという。そして練習でも、このメニューは何のためにやるのか、より深い意識を持つようになったという。
技術的にもワインドアップからノーワインドアップにフォームを改良し、この期に及んでボールの握りも試行錯誤したそうだ。それによりリリースポイントが打者よりになって、ボールの威力は増したという。
豪快なフォームはダイナミックで威圧感がある。一方で低めにコントロールされるカットボールなど変化球は繊細だ。
先にも触れたが、甲子園の交流戦は149球を投げきりチームをサヨナラ勝ちに導いた。昨秋の新チーム結成から公式戦無敗のまま28勝0敗で高校野球生活を終えている。そして139球目にこの日最速の153キロを記録し、エンジンの大きさを披露している。
スカウトは高校生ナンバーワン投手の評価をする。
「真っすぐの強さがずば抜けている。スピード、変化球の精度も高校生でトップ。スライダー、フォークがいい。近年の様々な上位の投手と比較しても遜色ないレベル。交流戦では暑い中、9回に153キロの球を投げられていて、スタミナ面も問題ない。即戦力に近い投手で将来はチームの軸となれる」
志望届締め切り1週間前の突然の進路変更。これはある意味、試練だ。だが、『いい選択になった』といつか言える、跳ね返すパワーを持っている。