- プロ野球
2019.05.18 12:00
奥村奈未(埼玉アストライア) 自分の強みを考え抜き、女子プロ野球屈指の一塁手へ【野球女子 vol.2】
実力派揃いの埼玉アストライアで存在感を放つのが奥村奈未選手だ。
埼玉栄出身の奥村選手は2014年からプロ入りし、育成チームを経て、2016年からレギュラーとして活躍。2017年には一塁手としてゴールデングラブ賞、2018年には最多本塁打を受賞した。
奥村選手といえば、「開脚キャッチ」を生かした巧みな一塁守備と、積極的な打撃スタイルで長打・巧打を兼ね備え、攻守ともに女子プロ野球界トップクラスと評される。今季、通算100安打を狙っている奥村選手のこれまでの野球人生と、プロで活躍する背景に迫った。
千葉県出身初の女子プロ野球選手になるまでの歩み
千葉県出身の奥村選手。野球は木更津中央(現・木更津総合)の野球部出身の父に影響されて始めた。佐原ウィナーズに入団した奥村選手は、小学校4年生から投手を始め背番号「1」を任されるなど、ほぼエース格としての活躍を見せた。
「私が投手を始めたのはたぶん“目立ちたい”という想いがあったのかなというふうに思います。ピッチャーは主役ですから、小学校の時は“私が一番目立ちたい”っていう考えだったんじゃないかなと思います」
想いだけで活躍できるものではない。奥村選手は小学校の時から非凡な才能を発揮していた。中学に進むと、香取リトルシニアに入団。香取リトルシニアでは投手・内野手を兼任。チームに所属する傍ら、関東のシニアチームに所属する女子選手を集めたLS レディースシニアにも所属し、腕を磨いた。
高校入学時、野球を続けることを第一にした奥村選手は、関東圏で最も強豪と言える埼玉栄への入学を決意。埼玉栄の3年生時には全国優勝を経験する。
「私たちが1、2年生の時に先輩たちが優勝していたので、私たちが3年生の時も絶対優勝したいなという想いがありました。ですから優勝した時は素直に嬉しかったなというのを今でも覚えています」
そして女子プロ野球の入団テストを受験し、合格。千葉県出身として初の女子プロ野球選手となった。
「合格』というのを高校の部活の先生から知らせてもらったのですが、嬉しくて泣きました(笑)本当にプロになりたいと思っていたので、ひと安心というのもあったのですが、一番最初は本当にうれしくて、これから頑張らないといけないと思いました」
誰にもない柔軟性を生かし、開脚キャッチが生まれた
プロ入り後、奥村選手は育成チームのレイアでプレー。そこで一流選手のレベルの高さを痛感する。
「入団して初めてプロの選手と一緒に練習した時に、飛距離とか走るスピードとか体力とか、まったく違っていて、(このままではマズいなという)焦りがありました」
一流選手を目の当たりにして自信を無くす選手もいる中、奥村選手はこう思った。
「プロとして練習をしていたらここまで成長できるんだというワクワク感がありました」
プラス思考に切り替え練習に取り組んだ奥村選手は、自分の強みが何かを考えて取り組んできた。その中で奥村選手が最も自信があったのは柔軟性だった。奥村選手にお願いして開脚ストレッチを見せてもらうと、足は180度開脚させたまま上半身を地面に付けられる。驚異の柔軟性の高さを披露してくれた。
プロ入り後、一塁手となっていた奥村選手は「開脚キャッチ」に取り組む。プロに入って一塁手の守備力の重要性を感じるようになった奥村選手は、普段のキャッチボールからわざとショートバウンドで捕球したり、ノックを受けている時も一塁ベースについて捕球したり、こだわりを持って練習を重ねてきた。
その積み重ねで2017年に『ゴールデングラブ賞』を受賞した。
「そのシーズンは本当にがむしゃらにやっていたという年で、最初からタイトルを狙うというよりは、自分ができることをやり抜くという目標でやっていました。結果そういうタイトルを獲れて、タイトル自体も初受賞だったので、良かったですし自信にも繋がりました」
さらに翌2018年には打撃フォームを修正し、トレーニングで体重を増加させ、最多本塁打を獲得する。
「その年は始まる前から、ホームランを一本でもラッキーでもいいから打ちたいという目標があって、飛距離を重視してバッティングをして、本当に結果が出てくれたので、良かったと思います」
なぜ一年一年、着実に結果を残し、一流選手への階段を上っていけるのか。それは野球の向き合い方が変わってきたから。
「年を重ねるごとに野球がどんどん楽しくなってきていますし、結果にしても野球に対する考え方にしても、毎年すごく成長できていると思うので、どんどん上を目指せるから続けられているんだと思います」
入団した時はただ活躍したいという思いでがむしゃらに取り組んできたが、今では結果だけではなく、プロを目指す女子選手に憧れを持ってもらえるようになりたいと考えている。
「野球をやっている男の子は『プロ野球選手になりたい』ってほぼ全員言うじゃないですか。そういうふうに、野球をやっている女の子が『女子プロ野球選手になりたい』と思ってくれるようなプレーをして、憧れられる存在になりたいと思います」
現在は2年ぶりの年間女王を狙うチームの中で奮闘を続ける奥村選手。プロ入り後、プロとしてどう生きるべきか、何を強みにするべきか、それを追求してきた奥村選手から学ぶものは非常に多い。