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野球大国・ドミニカの現状 ~前編~ アメリカ野球の「租界」メジャーリーグ・アカデミー【WORLD BASEBALL vol.25】

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 これまでプレミア12出場国を紹介してきたが、今回から2回にわたって野球の母国・アメリカと並ぶ世界野球の強豪、ドミニカ共和国の野球の現状について紹介する。

 メジャーリーグに多くの選手を輩出し、第3回WBCでは全勝で完全優勝を果たしたこの国だが、WBC以外の国際大会では目立った実績を残していない。それにはこの国とメジャーリーグ擁するアメリカとの関係が大きくかかわっている。

 「ここで行われていることが、『ドミニカ野球』なのかどうか、それは私にはわからない。だって私はここ以外の野球をこの国で見たことはないのだから。ただ、ここで行われている野球が我が組織の野球だということは断言できる」

というのは、メジャーリーグがドミニカに置いている野球学校、アカデミーのチームを率いるある監督の言葉だ。

メジャーリーグ・アカデミーは最新鋭の施設を備えている

【メジャーリーグ・アカデミーは最新鋭の施設を備えている】

 1977年のトロント・ブルージェイズを皮切りに、各球団がこれに追随してアカデミーを設置した。1986年にロサンゼルス・ドジャースがカンポ・ラス・パルマスを建設したのをきっかけに、現在では、全球団が国際空港周辺に数面のフィールドを保有する自前の施設を置いている。

 このアカデミーに属する45チームが6地区に分かれて行うリーグ戦がルーキー級に位置付けられるドミニカン・サマー・リーグである。ここではドミニカだけでなく、中南米を中心に世界各地からスカウトされた選手たちが、各球団の育成方針に従って徹底的に野球の基礎を叩きこまれる。

ドミニカン・サマー・リーグでプレーするアカデミーの選手

【ドミニカン・サマー・リーグでプレーするエンゼルス・アカデミーの選手】

 プロと言っても、報酬はリーグ戦のある3カ月間で、700~800ドルが支払われるのみ。しかし、選手たち1年を通してフィールドに隣接した寮に入り、衣食住を提供され、練習後には語学のレッスンや希望者には高校レベルの教育が施される。アカデミーの施設はほぼ完全に周囲とは隔絶され、選手は原則外出禁止であることを考えれば、そこは「ドミニカの中のアメリカ」という世界である。

 この国で野球をするということは、「野球で稼ぐ」というのと同義である。少年たちは、メジャー球団との契約が解禁する16歳になる年の7月を目指して練習に打ち込む。学校にはクラブなどないし、そもそも学校に行く者が少ないという社会状況であるから「高校野球」などはない。あえていうなら、アカデミーでの野球が「高校野球」ということになる。しかし、その野球は、青春を仲間と分かち合うようなものではなく、アメリカン・ドリームを手にするための戦いでしかない。

 つまりは、ドミニカの10代後半以降の年代の野球選手は基本、メジャーリーグ球団と契約した選手なのである。

 したがって国際大会において、ナショナルチームを編成する際には必ずメジャー球団に「お伺い」をたてる必要があり、それゆえ各年代の「最強チーム」をつくることができるか否かは、メジャーリーグの方針に委ねられているのである。

 現実にはメジャーリーグは自らが主宰するWBC以外には、選手を供出することに積極的ではない。これが国際大会でドミニカが目立たたない最大の理由である。

文・写真=阿佐智