- 大学野球
2019.11.25 18:19
スカウトも素材評価の高校時代未勝利右腕が初めての全国で掴んだもの 松井友飛(金沢学院大2年)【Future Heroes Vol.40】
秋の大学日本一を決する明治神宮野球大会・大学の部。第五十回記念となった今年度の大会で、高校時代から急成長を遂げた大型右腕が躍動。わずか2試合ではあるが、大きなきっかけを掴み、さらなる飛躍を予感させるものがあった。
わずか2試合だったが、今後に繋がる大きな2試合となったはずだ。
19年ぶり2回目の出場となった金沢学院大。そのエースとして初戦と2回戦の先発マウンドに上がったのは、189cmの大型右腕・松井友飛。長い手足を使った思いきりの良い腕の振り、投げっぷりの良さには高い将来性を感じずにはいられなかった。
石川県立穴水高校時代は2年夏からエースとなったが、最後の夏も初戦敗退するなど公式戦で一度も勝つことはできなかった。ストレートは最速で139km/hを計測したこともあったが、ほぼストレートの投球でコントロールも良くなく白星には届かなかった。
それでも「地元で野球を続けたい」「高校で活躍できなかった分、見返してやろう」という気持ちがあり、金沢学院大に入学。元オリックスの五島裕二コーチらとフォーム修正に取り組んだ。腕を縦に振るように心がけていくようにするなどしていくと、球速は147km/hにまで成長。スライダー、カットボール、カーブ、チェンジアップといった変化球の精度も上がり、チームのエース格となり、高校時代ははるか夢であった全国の舞台にたどり着いた。
だが1回戦の九州産業大戦では全国常連校の打線に捕まった。初回に先頭打者を四球で出してしまうと2本のタイムリーを浴び、2回にはまたも四球からピンチを作り2本のタイムリーを浴びることとなりノックアウト。それでもチームは中盤の集中打で0対4から8対5の逆転勝利を収めると、2日後の2回戦・関西大戦で再び先発のチャンスが与えられた。
「力みがあったので、脱力と前でリリースすることを意識しました」と1回戦の反省を生かして修正をすると、その後準優勝を果たす伝統校打線を5回3安打2失点に抑える好投を見せた。
この試合は打線が相手投手陣に封じられて敗退となった。松井は「(失点した)2回は決め球が高めに浮いてしまいましたし、5回も失投。まだまだ力不足でした」と悔しがった。
一方で「ストレートはコースにしっかり行けば打たれず、球威は通用したと思います」と手応えを掴んだ。
そして、その素質は経験豊富なプロのスカウトも認めるレベルにある。制球を乱した1回戦を視察していた広島・苑田聡彦スカウト統括部長は「足を上げた時にパッと決まって立てているから、(リリースに向けて)上体が突っ込まなくなったり胸の張りが出るようになれば、コントロールは良くなりますよ」と期待した。高校時代の実績を考えても、その伸びしろは大いにありそうだ。
松井もまた「もっと成長して神宮に戻ってきたいです」と意気込み、将来についても「プロや社会人でやれる投手になりたいです」と展望を語る。
大器晩成。今回のかけがえのない経験を生かし、その言葉がピタリとハマるような成長曲線を願わずにはいられない。
文・写真=高木遊