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Future Heroes

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学生球界屈指の韋駄天。ドラフト指名漏れの悔しさを糧に再び神宮を目指す 金子莉久(白鴎大4年)【Future Heroes Vol.36】

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 一度走り出すとすぐさまトップスピードに乗り、次の塁を陥れる。そんな学生球界屈指の韋駄天は、NPB球団複数から調査書が届いたがドラフト指名漏れ。強豪社会人に進むことになった。だが、その前に学生野球を有終の美で飾らせるための大きな戦いが待ち受けている。

金子莉久(かねこ・りく)・・・1997年7月24日生まれ。栃木県日光市生まれ。野口クラブ(軟式)→宇都宮スターボーイズ(現宇都宮県央ボーイズ/硬式)→白鴎大4年。165cm68kg。右投左打。

 関東有数の観光地である栃木県日光市で生まれた。通っていた日光市立東中が全国的な強豪のようにアイスホッケーが盛んな土地だったが、金子が選んだのは野球だった。小学生時代は弱小チームで「人がいなくて投手もやりました」と話すが、中学時代は宇都宮スターボーイズでは「下手くそで外野に回されました」と意外な過去を振り返る。

 だが、当時からその俊足は際立つものがあり、陸上100mで県4位になるほど。その理由については「家族もみんなそこまで速くないですし、なんでか本当にわからないんです」と首を傾げる。「小さい頃山あいのところに住んでいて、坂が多かったのが良かったのかもしれないです」と真偽定かな話で笑う。

 野球の素質が花咲き始めたのは高校時代だ。国学院栃木で県準優勝が最高成績と甲子園出場こそならなかったが1年夏からベンチ入り。早くから声をかけてくれていた黒宮寿幸監督が率いる白鴎大に進むと、さらに活躍の幅を広げた。

 大学3年間で積み上げた盗塁数はリーグ戦通算73試合で49盗塁。3年春の全日本大学野球選手権でも中京大戦で5回に内野安打で出塁すると二盗、次打者が四球で出塁すると先制点に絡む重盗も成功させるなど3盗塁を記録。準々決勝の東北福祉大戦でも1盗塁を決めるなど記憶に残る活躍を遂げた。

 また、3年春に打率.404でリーグの首位打者になるなど打力もある。小柄ではあるが「それで何かができないとは思われたくないです」と力を込めて話すように「 “小技もできるけど長打も打てる”という打者になれるように練習しています」とウェイトトレーニングでも力をつけ打撃を磨いてきた。

 今春は厳しいマークにも遭い、打率が3割に届かずに悔しい思いをしたが、秋はリーグトップの16安打を放ち、打率も.421を記録。優勝をかけた上武大戦でも内野安打で出塁すると、次打者のセンター前安打の際に相手のミスを見逃さずに、一塁から本塁へ一気に生還。このビッグプレーでチームを勝利に導き、3季ぶりのリーグ優勝を決めた。

 ドラフト指名漏れの悔しさを味わったばかりの試合ではあったが、「あの日の夜は4年生みんなでその後、残念会を開いてくれました」と話すように、同期たちとの結束は強い。
それだけに「神宮で打って(大学野球生活)を笑顔で終わりたいですね」と、既に視線は前を向いており、明治神宮大会出場をかけて29日からの横浜市長杯を戦う。

 卒業後は社会人野球の強豪・JR東日本に進み、都市対抗の舞台である東京ドームでの活躍も期待されるが、まずは神宮球場でその勇姿が再び見られるのか。俊足、そしてそれだけにはとどまらない活躍が期待されている。

文・写真=高木遊