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対戦相手やスカウトも唸る! 高校時代バレー部の最速148キロ左腕 松田亘哲(名古屋大4年)【Future Heroes vol.22】

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 名古屋大の最速148キロ左腕・松田亘哲は高校時代、バレーボール部に所属していた異色の経歴をもつ。難関国立大のメガネの投手を、今やプロ球団スカウトも注目している。

松田亘哲(まつだ・ひろあき)・・・1997年5月16日生まれ。愛知県江南市出身。小牧JHBC(軟式)→江南高(バレーボール部)→名古屋大4年。176cm81kg。左投左打。

松田亘哲(まつだ・ひろあき)・・・1997年5月16日生まれ。愛知県江南市出身。小牧JHBC(軟式)→江南高(バレーボール部)→名古屋大4年。176cm81kg。左投左打。

★大学で初めて硬式の球を握る

 江南高ではバレーボール部に所属していた。「バレーボールを選んだ特別な理由はありません(笑)。高校に入ってから、中学時代の野球仲間に誘われたのがきっかけです。僕のような初心者の入部も結構ありました」。レシーブで球を拾うリベロを担い、県大会にも出た。

 もともと中学時代は軟式クラブ「小牧JHBC」でプレーしていた。投手としては三番手。「自分が高校野球でプレーするのは無理だろうな、という思いもありました」と打ち明ける。しかし高校生活を経て大学受験が近づくにつれ、野球への思いがよみがえってきた。

 合格した名古屋大は「旧帝大」の位置付けで、国立大の中でも特に高い学力が必要だ。その分、野球部員は高校球界で鳴らした猛者ばかりではない。さすがに松田のような高校野球の“未経験者”はほとんどいないが、硬式でのプレー経験すらない松田にとってはなじみやすい環境だった。

 大学で野球に打ち込むと、ストレートの最速は148キロに達した。「バレーボールで日頃からジャンプしていた分、体のバネがついていたのかな」と冗談気味に話すが、走り込みやトレーニング、食事で体をつくり、投球動作も研究してきたからこそ。生来の運動神経と、徹底的な鍛練の成果だ。ストレートで勝負できる。

松田亘哲(まつだ・ひろあき)・・・1997年5月16日生まれ。愛知県江南市出身。小牧JHBC(軟式)→江南高(バレーボール部)→名古屋大4年。176cm81kg。左投左打。

★ドラフトでの「プロ志望届」提出を明言

 チームは愛知大学野球連盟で最も低い三部リーグだが、松田は評判だ。「今の愛知リーグで一番いいピッチャーではないか。球が伸びる。立ち上がりにつけこんで、ウチが勝ったけれども…」とは、この春に入替戦で戦った名古屋経済大・平林二郎監督(元阪急)の談。2016年のドラフトで左腕・中尾輝(現・ヤクルト)をプロに送った敵将も舌を巻く。

 プロ球団スカウトも関心を寄せる。春のリーグ戦までに、地元・中日や、日本ハム、楽天、阪神など計6球団が視察した。熊崎誠也スカウト(日本ハム)は「きちっと腕が振れるのがまず良い。僕のスピードガンでも140キロ台中盤まで出た。バレー部だったことが悪いほうには出ていない。投げる球の一球一球は良くなっている」と評価する。

 今後のポイントは「経験不足を、頭脳も生かしてどう乗り越えていくか」(熊崎スカウト)。名古屋大・服部匠監督も「プレッシャーのかかる場面などで、いかにマウンド上で気持ちをコントロールできるか」と言う。松田は「『抑えなきゃ』と気負うとスピードも落ちる。気持ちを自分以外のところに向けたほうが制球力も上がる」とヒントはつかんでいる。

 黒縁のメガネはトレードマークだ。「昔、コンタクトレンズにしたこともありましたが、メガネのほうが合った。それにメガネだと、名大っぽさが出るじゃないですか」。

 卒業後は、より高いレベルでのプレーを望む。「やれるところまでやってみたい。挑戦したい気持ちがある」。今秋のドラフト会議では「プロ志望届」を出す予定。厳しい環境とされる独立リーグや、アマ最高峰・社会人野球への挑戦も思い描く。一般企業への就職活動はしていない。野球への強い意志がみなぎっている。

文・写真=尾関雄一朗