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軟式野球部に逸材現る!プロも注目する最速147キロ右腕 上田空大(瀬田工3年)【Future Heroes Vol.21】

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 今年の滋賀県最速の高校生投手が瀬田工にいる。だが、その投手が所属しているのは硬式野球部ではなく軟式野球部だ。彼の名は上田空大。最速147㎞/hのストレートを武器にすでにプロ3球団が視察に訪れている。

上田空大(うえだ・くうと)・・・2002年2月8日生まれ。滋賀県大津市出身。大津市立皇子山中→瀬田工3年。178cm70㎏。右投右打。投手。

 瀬田工の軟式野球部は昨秋をはじめ、2度の近畿大会準優勝が最高成績で全国高等軟式野球選手権大会の出場経験はない。髪型は自由でアルバイトも許可されており、世間一般の高校野球と比べると自由な雰囲気だ。上田自身も週に2回は地元の焼肉店でアルバイトをして、自らの小遣いに充てている。しかし、これほどの逸材がなぜ、軟式野球部にいるのだろうか。

「一度、肩を怪我してしまって、硬式でやったらまた怪我すると思ったんです。お兄ちゃんもいるし、一緒に優勝を目指せたらいいなと思っていました」

 大津市立皇子山中の軟式野球部時代は大津市の大会で優勝した経験もあるが、中学3年生の時に肩を故障。再発の不安もあり、2つ年上の兄・海理さんも所属していた瀬田工の軟式野球部に入部することになった。

 入部当初の球速は120㎞/h台後半だった。急成長の要因については「イマイチ、これというのはわからないんですけど、投げ方を変えた時に自分の中で何かが変わりました」と話す。2年生の春にOBの勧めで少し腰をひねる投げ方に変えると、これが見事にハマった。

 球速が表示される守山市民球場で行われた春季滋賀大会で147㎞/hを計測。その数字を見た時は「ホンマに出ているのかな?」と目を疑ったが、この一球で世界が変わった。

 以前は母親と同じ美容師を目指していて、野球は高校で終わるつもりだったという。しかし、春の活躍からプロのスカウトや大学関係者の目に留まったことで「声がかかったので、野球をやってみようかな」と野球続行への意欲が湧いた。

 現在は硬球で練習することは一切なく、最後の夏に向けて軟式での練習に専念している。各都道府県から1校(北海道と東京は2校)が甲子園に出られる硬式とは違い、軟式は16校しか選手権に出場することができない。瀬田工は滋賀大会で比叡山との直接対決を制した後に滋賀、京都、奈良、和歌山の代表校が出場する近畿大会を勝ち抜く必要がある。その中で壁になりそうなのが天理だ。

 天理は3年前に全国制覇を成し遂げている強豪校。春の近畿大会では天理と初戦で対決したが、小技でかき乱されて0対11の5回コールドで敗れた。初の全国出場に向けて上田は「夏は天理を倒したいです」と春のリベンジを誓っている。

 瀬田工の初戦は7月28日に皇子山球場で行われる比叡山との滋賀大会決勝戦。「夏までには150㎞/hを出したいです」と宣言する軟式野球界の逸材はどんなピッチングを見せてくれるのだろうか。

好きな選手は大谷翔平(エンゼルス)。「自分の中で155㎞/hは確実に出せる気がしています」と自らの可能性に自信を見せている


1年秋の動画。フォームを改造する前から球の伸びなどは出色のものがあった

文・写真=馬場遼