- MLB
2019.10.08 12:00
メジャーリーガーたちが愛用! 再建に成功した野球防具メーカー「ベルガード」の永井社長に聞く<後編>【Baseball Job File vol.22】
野球界にかかわるさまざまな人々にスポットを当てる連載。今回は、野球防具に定評のある「ベルガードファクトリージャパン」の永井和人社長に話を聞いた。倒産からの会社再建に成功し、今では多くのメジャーリーガーにも愛用されるようになった、その“理由”は一体、何なのだろうか。
<前編はこちら>メジャーリーガーたちが愛用! 再建に成功した野球防具メーカー『ベルガード』の永井社長に聞く<前編>【Baseball Job File vol.21】
■確かな技術、細やかな対応と自己流カスタマイズ
――製品の受注や、その際の細かな要望など、すべてSNSのダイレクトメッセージを通して行なっているということですが、外国人を相手に苦労することもあるのでは?
永井 いえ、苦労はほとんどないですよ。取引しているのが南米の選手が多くて、やり取りは英語なんですけど、彼らは普段スペイン語を話すので、英語と言っても簡単な内容なので、わかりやすいんですよね。
それに言葉だけじゃなくて、製品を作るときはその選手のビデオなどを見ると、どんなものがいいかがある程度判断できる。
その選手のプレースタイルにあった製品というものがありますから、あとは実際に使ってみて、細かいところを調整していくという形を取っています。それに外国人選手ってだいたいがフレンドリーですから。
――ベルガード の製品としての特徴、ウリはどういった部分になるのでしょうか?
永井 元々、他メーカーのものもうちで作っていましたし、そのしっかりした技術があるのが第一です。その上で、自社で作っているので、選手の細かい要望に応えることができて、カスタマイズできる。
それに僕が元々は職人として製品を作っていたので、技術的にできるものとできないものがすぐに分かるので、対応も早くできると思っています。「ここをもうちょっとこうしてくれ」という要望があっても、極端な話、次の日に持って来ることもできます。
――メジャーリーガーたちからはデザイン面での評判も高いようですが?
永井 アメリカではオーダーシステムというものがなくて、既製品を使っているのがほとんどだったようです。その中で、自分でアレンジできるというところが受けた。特に喜ばれたのが、「自分の名前を入れられる」というものでしたね。
流行りはカタカナで自分の名前を入れること。WBCの時にドミニカ共和国とかプエルトリコ、アメリカ、キューバといったところの代表選手が、カタカナの文字が入ったレガースなどを使っていて、そこからまた認知度が広まったと思います。
――MLBの中継を見ていても、超一流の選手たちが「B」のマークの入った防具をつけて試合にでています。野球の見方というのは変わりましたか?
永井 そうですね。見る視点は変わりましたね。とにかく「怪我をしないでくれ」と。活躍してくれると嬉しいですけど、防具ですから「まずは怪我をしないで」と思って見ています。
■子供達がいつでも遊べるスポーツへ
――ベルガード が再出発してからもうすぐ節目の10年を迎えることになります。今後のプランは?
永井 おかげさまで業績の方は安定してきましたけど、いろんな方に助けてもらってここまで来られたので、その恩返しをして行かなくちゃいけないと思っています。他社とのコラボ商品作ったりもして、いろいろと協力して行ければと思っています。
会社として防具が専門ですけど、基本的に何でも作ることができる。製薬会社、アパレルメーカーとコラボした製品もあって、今後はそちらの製品も増やしていきたいですね。
――野球の国産メーカーとして、今の日本の野球を取り巻く環境について何か思うことはありますか?
永井 昔と比べると野球の競技人口が減ってきているということはやっぱり感じますね。公園とかでも野球が禁止されている場所が多くて、子供たちが野球をしている場面を見かけることも少なくなってしまった。そういう部分は、野球界全体として何とかしないといけないですね。
私たちが作っている防具に関しても、本当はプロの選手だけじゃなくて、子供たちにももっと使ってもらえるようになればと思っています。
――キャッチボールもしてはダメみたいなところも多いです。
永井 そうですね。今は野球をしようと思うとチームに入らないとできなくなって、気軽に楽しめるものではなくなって来てしまった。野球というものが敷居の高いスポーツになって来てしまっているので、昔のように子供たちがいつでも遊べるスポーツに、もう一度なってもらいたいです。そういう場所を作ってもらいたいですし、会社としてそれに協力できることがあれば、どんどん協力して行きたいと思っています。
■プロフィール
永井和人(ながい・かずと)
1961年4月13日生まれ。東京都出身。
高校卒業後にベルガードに入社。
職人として腕を磨いたのちに企画にも携わり、会社の倒産を機に新たに社長に就任。
自らが最初に作った防具はヤクルトの八重樫幸雄選手のレガース。
【ベルガードファクトリージャパン株式会社】
埼玉県越谷市にある野球国産メーカー。防具を中心に、グラブ、ミット、スポーツウェアなども製造販売。「人と人との繋がりに感謝しジャパンテクノロジーを世界へ」を経営理念に掲げる。
HP:http://www.belgard.co.jp/
オンラインショップ:http://www.belgard.co.jp/shop/
Facebook:https://www.facebook.com/belgardfactoryjapan/
Instagram:https://www.instagram.com/belgard_factory_japan/
取材・構成:三和直樹