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2019.05.07 12:00
「選手の可能性を広げる存在でありたい」――ジュニア世代のバッティング指導 【Baseball Job File vol.5】
プロ、アマを問わず野球界にかかわるさまざまな人々にスポットを当てる連載。今回は、JBS武蔵というバッティングスクールの代表を務める下広志さんをフィーチャーする。
学生時代はプロ野球選手を目指してきた、下さんが、指導者となったきっかけや指導者としてのポリシーなどを伺った。
人々に喜びを与えられる人を育てたい
──現在の職業につかれたきっかけは何だったのでしょうか?
下 兄の影響で小学校1年から野球を始め、プロ野球選手になりたいと努力してきました。高校時代は野球専門誌に有望選手として取り上げられたこともありましたが、大学3年くらいでプロは難しいとプレーヤーは大学で終わりにしようと思ったんです。
そこでどんな職業につこうか考えていたとき、人に喜びを与えられる人材を育成したいと思ったんです。高校時代たくさんの人に応援していただき、夏の県予選決勝で敗れたあとも、スタンドで応援してくれた部員や学校関係者、親御さんが花道を作ってくれていたんです。
そのときに、自分の頑張りでこれだけの人が応援したり、喜んだり、涙を流したり、野球に興味を持ってくれるんだと感じました。その気持ちが蘇ってきて、野球でなくても、育成関連の仕事がしたいと思ったんです。
そんなとき、スポーツデータバンクが運営するジュニアバッティングスクールでアルバイトを募集していると紹介されて、これはやるしかないと思いました。
──野球経験者とはいえ、プレーヤーと指導者には大きな違いがあると思います。最初の頃に苦労したことはありますか?
下プレーヤーのときは、自分のことだけ考えればよかったのですが、スクールでの指導になると、子どもたちはもちろん、保護者へもしっかり説明をしなければいけない。人としてどう見られるのかということもありますので、話し方はもちろん、自分を客観視してみるということなどに苦労したと思います。
選手の可能性を広げる存在でありたい
──スポーツデータバンクの社員としてではなく、独立した形で指導を続けようと思った要因は何だったのでしょうか?
下 社員としてたくさんの経験をさせていただく中で、自分の考えを明確にした指導がしてみたいと思ったのが独立のきっかけだと思います。もともと、自分でこうしたいという考えを打ち出すことが強いタイプだったこともあり、上司に考えを理解してもらい、独立させていただきました。
──指導者としてブレずに伝えていることは何ですか?
下 子どもたちには自分の可能性を低くみないように教えています。僕は、指導者というものは、選手の可能性を広げる存在であるべきだと考えています。
例えば10回中1度もバットにボールを当てられない子どもがいるとします。その子どもが1回ボールを当てたときに、どうするかが大事なんです。
野球経験者からすれば大した事実ではありませんが、今までできなかった子どもにしてみれば大きな経験なんです。この大きな経験にフォーカスすることで、子どもが自信を持てるようになるわけですから。
また、スクールでは技術を磨くことも教えていますが、悩んでいる子どもたちのメンタルケアにも力を入れています。そのためにも、僕自身たくさんの話を聞いて、アドバイスできるように努力はしています。
野球人口が増えるように影響力を持てるようになりたい!
──現在の仕事をやられて、一番のやりがいは何でしょうか?
下 スクールで教えている子どもたちが、自信を持ってくれる姿を見せてくれることがやりがいになっています。
子どもたちができるんだって思ってくれることがすごくうれしいことですし、そこからチームで結果を出せば、本人はもちろん、保護者をはじめ周りの人が喜ぶ姿を思い浮かべることができるので、いい影響が与えられていると想像できるので、誇りにも思えます。
──JBS武蔵の繁栄も含め、今後、どのようなことに力を入れたいと考えていますか?
下 現在は、動画配信サイトのチャンネルの登録数も4万を超え、ブログも10万PVを超えることもあります。しかし、もっと発信力を持つ指導者になりたいと思っています。
あとは、野球界で影響を持っている方々とつながり、野球人気を復活させるプロジェクトを立ち上げるなどのプログラム構築もできればと考えています。そのためにも、僕自身がもっと影響力を持つ人間に成長したいと思っています。
▼プロフィール
下 広志(しも・ひろし)/1986年生まれ、千葉県市原市出身。小学生1年から野球を始め、大学卒業までプレー。大学卒業後はスポーツデータバンク株式会社に入社し、ジュニアバッティングスクールの運営や社内システム構築などを手がける。その後2014年に独立しJBS武蔵を設立。ブログや動画配信サイトでも情報を提供しながらスクール運営や指導に携わる。
JBS武蔵オフィシャルサイト:俺の育成論
取材・文/松野友克