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「野球の楽しさをもっと多くの人へ」――、バッティングセンターの役割と可能性【Baseball Job File vol.4】

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 プロ、アマを問わず野球界にかかわるさまざまな人々にスポットを当てる「Baseball Job-File」。第4回目は、東京都町田市にある「ダブルデイフィールド バッティングスタジアム」の佐藤浩次代表に、バッティングセンターに対する熱い想いと、その役割、そして可能性を聞いた。



■「野球の仕事がしたい」サラリーマンから一念発起して独立

――現在、バッティングセンターを運営されていますが、この「ダブルデイフィールドバッティングスタジアム」はいつオープンされたのでしょうか?

佐藤 1998年の10月からですね。今年で21年目になります。普段は店の運営、接客からマシンの調整、グッズ販売もしていますし、野球教室や女子野球の選手を招いてのイベントなども開催しています。野球を始めるキッカケになってもらいたいですし、何より野球に触れて、楽しんでもらいたい。自分が大好きな野球を、少しでも多くの人に触れてもらいたいという思いでやっています。



――そもそもバッティングセンターを始めたキッカケは?

佐藤 高校までは野球部に入って甲子園を目指していました。でも選手としては高校までで、大学で上京して、卒業後は普通に就職してサラリーマンとして働いていました。ですが自分の中で、どうしても野球に関係する仕事をしたいという思いが捨て切れなかった。色々と野球に関係する仕事を探したりもしたんですが、なかなか思うように見つからず、それなら自分で自分の店を開くのもいいかな、と。

――大きな決断だったと思いますが、当時何歳だったのですか?

佐藤 当時33歳です。今思うと、よく決断できたなと思います(笑)。周りからの反対もありましたけど、なんだか分からないけど「やりたい」というエネルギーがあったんですよね。ちょうどサラリーマンとして10年働いて、今後の自分の人生を考える時期でもありましたし、タイミングが合ったのかなと思います。

――実際にお店を始めて予想以上に大変だと思うことはあったと思いますが?

佐藤 そうですね。どの仕事も大変だと思いますけど、会社の仕事ではなくて自分が始めたことなので、全部自分一人でやらなきゃいけない。組織に属している訳ではないので、最初は信用もない。コピー1枚するにしても、会社だったらコピー機がありますけど、わざわざコンビニまで行ってしなきゃいけなかったり、何より当時はインターネットが今みたいに普及していなかったので、情報をどう収集するのか、どうやって発信するのか。その部分で苦労しましたね。

■野球の楽しさを、もっと気軽に、もっと身近に

――バッティングセンターは子供から大人まで、気軽に一人でも楽しめる。その意味では日本の野球を支えている部分があると思いますが?

佐藤 そうありたいですね。うちの店のキャッチコピーとして、「野球の楽しさをもっと多くの人へ」というものがあるんです。昭和の時代でいうと近所の原っぱにしたい。みんなで野球をして遊んでいた場所に、このバッティングセンターをしたい。最近は公園で野球禁止だったり、チームに属さないと野球ができなかったりするので、もっと気軽にバットを持ってボールを打って、それだけで楽しめるということを多くの人に感じてもらいたい。

――こんな人にはバッティングセンターに是非来て欲しいというものはありますか?

佐藤 いろいろな人に、気軽に遊びに来てもらいたい。プロを目指している野球少年にも来てもらいたいですし、他のスポーツをしているけど「ちょっと遊びに」という感じで楽しんでもらったり、大人の方も仕事帰りに寄ったり、女性の方にも来てもらいたい。小さい子供用の柔らかいボールを使ったトスバッティングなどもあるので、家族連れの方にも来てもらいですね。



――これまでで嬉しかったこと、お店をやっていて良かったと思う時はどんな時ですか?

佐藤 本当に野球が好きなんで、野球の側にいるというのがまず嬉しい。中には甲子園やプロを目指して熱心に練習しに来る子もいて、彼らが実際にプロになったりするとやっぱり感慨深いものがありますね。
 
 現役ですと、日本ハムの横尾俊建くんやロッテの菅野剛士くん。彼らは子供の頃からよく打ちに来てくれていました。プロ入り前なんかも「お世話になりました」って挨拶に来てくれた。

 みんながみんなプロになれる訳じゃないですけど、こういうバッティングセンターで練習したことが未来に繋がるというのは嬉しいですね。別にプロになることだけじゃない。もう20年やっているんで、店を始めた頃に来てくれていた子供達が、今は大人になって結婚して自分の子供を連れて来たりする。そういうのは、これまで長くやっていて良かったなと思いますね。自分が歳をとったな、とも感じますけど(苦笑)



――今後やってみたいことを含めて、バッティングセンターは今後、どういう役割を果たして行くべきだと思いますか?

佐藤 今後も気軽に野球に触れられる場所、野球の楽しさを感じられる場所として、バッティングセンターが存在していければと思います。最近は子供の数自体が減って来ていることを考えると、女の子にももっと来てもらいたい。そのためにも今後も女子プロ野球とのイベントを開催したい。今後もバッティングセンターが存在する意義、果たす役割はあると思いますし、どの街にもバッティングセンターがあって、その地域に欠かせない場所になれればと思います。生涯スポーツの中で、気軽に体を動かせて汗をかける場所になって行ければと思います。


▼プロフィール
佐藤浩次(さとう・こうじ)/1965年生まれ、福島県出身。小学生の時から野球に親しみ、高校時代は甲子園出場を目指して汗を流した。大学進学とともに上京。1998年に「ダブルデイフィールド バッティングスタジアム」(住所:東京都町田市小山町706-1)をオープン。店の中は野球用品に野球グッズ、様々な野球ゲームに溢れている。営業時間は平日13時30分から22時30分、土日祝日は10時から22時30分。駐車場完備。

取材・写真=三和直樹