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いつかはチーズケーキ専門店を! 『2-3Cafe』 小林敦司さんの思い【Ballpark Trip vol.31】

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多くの子ども達にとって憧れの存在であるプロ野球選手。何万人もの観客の前でスポットライトを浴び、一球、一振りにかける姿は見るものを魅了する。そんなプロ野球選手も、いつかは現役生活に幕を下ろすときがやってくる。

多くの場合、現役を引退した後の人生のほうが長い。コーチや監督として、野球界に残ることのできる選手はほんの一握りしかいない。解説者にしても同様だ。つまり、大多数は野球と関係のない仕事を引退後に始めなくてはならないのである。

【小林敦司さん】

【広島とロッテで中継ぎとして活躍した元プロ野球選手の小林敦司さん】

プロ野球選手になるくらいである。子どもの頃から少なくとも高校までは野球漬けの生活。プロに入ってからも練習と試合に明け暮れ、一般社会での経験はほとんどない。

そのような状況のなか、第2の人生とも言える現役引退後に成功を収めつつある人物がいる。広島とロッテで中継ぎとして活躍した小林敦司さんである。小林さんは1990年ドラフト5位で拓大紅陵高校から広島へと入団。2001年までの11年間で59試合に登板した中継ぎ右腕である。

【お仕事中の小林敦司さん】

【仕事中の小林敦司さん】

現役を引退後は有名洋菓子店でのアルバイトなどを経て、2011年4月に東京は代官山に「2-3Cafe」(ツースリーカフェ)をオープンさせた。チーズケーキが売りのカフェである。現在は土日こそアルバイトスタッフがいるものの、平日はひとりで店舗を切り盛りしているという。

いくら元プロ野球選手といえども人間である。風邪だって引くことはあるだろうし、突発的な病気がないとは言い切れない。休業など心配ではないのだろうか。

「風邪は引かないです。野球をやっていたからというわけではなくて、引いてられないですよ。自分の生活がかかってますからね」

生きるために必死だという、熱いメッセージが返ってきた。プロ野球選手時代とは違った思いが感じられる。その思いを持ってお店を続けてきた小林さんに事業を拡大しようといった野望はないのだろうか。

「大きくしようと思ってないんですよ。言葉が悪いかもしれませんが、余計なものをつくりたくないんです。ほんとうはチーズケーキで勝負したいんですが、できないからランチやったり、ディナーをやったりしてるんですよね」

小林さんにはチーズケーキに並々ならぬ思いがあることがよくわかる。そのあとには、こんな言葉が続く。

「ゆくゆくはチーズケーキ専門店をやりたいんです。今、現実的な計画はありませんが、頭の隅にずっとありますね。経営者としてはダメかも知れませんが、ぼくは人に任せることができないんです。やるとなれば自分でやりますよ」

チーズケーキ専門店を構えたいほどの思いが小林さんにはある。

【店頭にはメニューが表示されている】

【店頭にはメニューが表示されている】

小林さんは店舗をオープンさせる前には洋菓子屋で腕を磨いてきた。ロールケーキなどその他のスイーツをつくることもできるのだそう。

「ロールケーキだって美味しくできますよ(笑)。他にやる余裕がないのかもしれませんけど、やっぱり軸をぶらしたくないんですよ」

と他のスイーツにも自信があるが、チーズケーキという軸をぶらしたくない。それが小林さんの思いなのである。

チーズケーキ専門店を構えたいという思いのある小林さんだが、様々なインタビューで「ハワイに店舗を構えたい」と口にしている。その思いは今もあるのだろうか。

「ほんとはハワイでやりたかったんですけど、お店は出さないですね。楽しく行けるようにしたいんですよね。調べれば調べるほど大変というのがよくわかりました。ちがうところで仕事をしっかりやって遊びで行きたいな、と。そのほうが楽しく過ごせますし」

と仕事ではなく、遊びで楽しくハワイに行くことへと頭の中を方向転換している。

【看板商品のチーズケーキ】

【看板商品のチーズケーキ】

このように小林さんは、チーズケーキという看板商品に自信を持ちつつ、「人に任せられない」経営者としてのダメな部分とも向き合ってきた。

生きるために必死で戦い自分に自信を持ちながら、ダメな部分と向き合うのは、決して簡単なことではない。そこから逃げずに立ち向かってきたからこそ、移り変わりの早い飲食業界でありながらも店舗が長く継続しているのだろう。

そんな小林さんが思い描く、チーズケーキ専門店がオープンする日を楽しみにしたい。

(記事:勝田聡)