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『MLBが好きだから』その愛が半端ない MLB café TOKYO 東京ドームシティ店 伊藤岳義店長【Ballpark Trip vol.28】

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 1995年に野茂英雄が日本人2人目のMLBプレーヤーとなってから24年が経過した。その間に日本のMLBを取り巻く環境は大きく変わってきた。

 1995年当時は一部の野球好きの間でしかMLBは話題にのぼらなかった。しかし現在はテレビ、新聞、インターネットメディアで每日のように報道されるようになっている。また、MLBのグッズを取り扱うショップやMLBファンが集う飲食店も増えている。

 そのひとつが東京ドームから徒歩1分のところに位置する『MLB café TOKYO 東京ドームシティ店』である。同店はMLBから公認を受けているエンターテイメントレストラン。料理、内装、スタッフからMLB、そしてアメリカを感じさせてくれる。

【伊藤岳義店長】

【伊藤岳義店長】

その店舗をMLB café TOKYO 恵比寿店の店長を経て、2015年のオープン時から切り盛りしているのが伊藤岳義店長である。

 伊藤店長は1982年2月生まれの37歳。日本人メジャーリーガーでいうと青木宣親(現・ヤクルト)、岩隈久志(現・巨人)や川崎宗則(現・台湾)と同世代だ。そんな伊藤店長にお話を伺ってみた。

 もしかしたらMLBから公認を受けているレストランの店長と聞くと、MLBの知識が半端なく、最近ファンになった人は話しかけにくいイメージを持つかもしれない。しかし、そんなイメージはすぐに吹き飛ぶ。それくらい気さくな男性なのだ。

まずはMLBに興味を持ったきっかけからうかがってみた。

「メジャーリーグガムというのが、小学生の頃にあったんですよ。ぼくは名古屋出身なんですけど、他の地域でも売ってたんじゃないかな? 各球団のロゴがパッケージに入ってるんですね。例えば、緑と黄色の柄のロゴがあって、まぁアスレチックスなんですけど『なんだこのチームは(驚)』って思いながら興味を惹かれましたね」

【仕事中の伊藤岳義店長】

【仕事中の伊藤岳義店長】

 伊藤店長が小学生の頃というのは野茂が海を渡る前のこと。テレビなどでの報道はほとんどなかったはず。そのなかでどのように選手や球団を憶えていったのだろうか。日本のプロ野球であれば、テレビ報道や雑誌などから情報を得ることはできる。伊藤店長は名古屋出身。ナゴヤ球場で観戦もできる。しかし、MLBはそうはいかない。

「当時は今みたいにインターネットで検索する時代ではなかったので、ベースボールカードから憶えましたよ。かなり買いましたね。入り口はカードでした」

 今の時代ではインターネットで検索すれば動画含めいろいろな情報は出てくるが、カードで選手を覚える方法は生きている。さて、小学生の時にMLBを持った伊藤店長はいつMLBの仕事に就こうと思い立ったのだろうか。

【コミュニケーションをとる伊藤岳義店長】

【コミュニケーションをとる伊藤岳義店長】

「小学生の頃からメジャーリーグ関連の仕事をするってずっと決めてました。実はここがベースボールカフェ(※1)だったときに来たことあるんですよ。そのときに『こういうところで絶対働くんだ』って思いましたね。で、調理師学校に入って東京に出てきました。この会社に入る前は野球とは関係ないですが飲食系で働いてましたよ」

小学生のころに思い立ったことをそのまま仕事にしたのである。並々ならぬ愛、そして情熱が感じられる。これはまさにプロ野球選手のようだ。

「それ一本でしたね、ずっと。メジャーリーグが好きだから。もちろん勉強もしました。まずは昔の選手から調べ始めましたよ。日本語の文献を読み漁りました。そうするとどんどん脱線しちゃうんですよ。それこそ野球の始まりというか起源とかニグロリーグ(※2)とか(笑)」

【伊藤岳義店長】

【伊藤岳義店長】

 好きだから、この思いだけでやってきたと言っても過言ではない。かなりの量の文献を読み漁っていることもあり知識量は半端ない。その知識はニグロリーグ(※2)から現在進行系のできごとまで多岐にわたる。プロ野球で例えると戦前の1リーグ時代の話から、先日の日本シリーズまで、いやストーブリーグまでを網羅しているということだ。

「オフシーズンになってからすごい勉強してるんですよ。解き放たれるんです。シーズン中は動画サイトあまり見ないんですけど、今は履歴が全部MLB関連で埋まりますね。もう1回ワールドシリーズを最初から見てみようとか(笑)」

 話を聞けば聞くほど伊藤店長の『メジャーリーグが好き』という情熱には圧倒される。ただ好きなだけではない。それをもっと知ろうとする探究心も持ち合わせているのである。愛としか言いようがない。

 メジャーリーグガムを見て興味を持った小学生が20年以上の時を経て、MLB公認のレストランの店長になる。そのストーリーの軸にあるものは『MLBが好き』ということに他ならない。

好きが最大の武器になる、ということを改めて気付かされた。愛は強い。

※1 現在のMLB café TOKYO 東京ドームシティ店は、以前ベースボールカフェだった。運営会社は別。

※2 ニグロリーグは1920年代から行われていたアフリカ系アメリカ人による複数のリーグ

【店員の方とコミュニケーションをとる伊藤岳義店長】

【店員の方とコミュニケーションをとる伊藤岳義店長】

記事:勝田聡