- 高校野球
2019.10.09 17:15
履正社にはボコボコにされたが、プロで雪辱誓う
鈴木寛人( 霞ヶ浦高)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 高校生編】
「6対11」まさかの大敗だろう。
霞ケ浦はこの夏、優勝した履正社に、初戦で当たる不運に見舞われた。エースの鈴木は3回もたずに7失点。泣きはらした顔でお立ち台へ。
「球速が出ても、指にかかっていないと全国では打たれる。力負け。厳しく責めたつもりですが、腕が振れていなかった。気持ちが前に行ってフォームのバランスが崩れた」
1回表、145キロをライトに先頭打者ホームラン。4番の井上にはソロ。3回には8番バッターに3ラン。3イニングでいきなりの3ホームラン。1試合で3本は初めてだと言った。
霞ヶ浦は甲子園では未勝利で、今回も好投手鈴木をもってしても、次に持ち越された。
1年秋からベンチ入り。関東大会全2試合の先発を務め、連続KOを喫しながらも好資質で注目を集める。
夏の茨城大会はリリーフとして4試合に登板した。準決勝の土浦日大戦でリリーフ失敗、2年秋も準決勝で藤代に1点差負けして、全国には遠かった。
ここから走り込みなどトレーニングを積む。2年の冬をおえて最速148キロへと飛躍。3年になって春から夏に大きな成長が見えたという。
高橋監督は「9回を投げ切るノルマを与えた」という。東海大相模や花咲徳栄に打ち込まれるが、一方で桐蔭学園、作新学院に完封したという。ボコボコから完成形へ。背番号1は、ここで初めて与えられたそうだ。
夏の茨城大会に28イニングを投げ、29奪三振3失点の好投で甲子園切符を手にする。
センバツに出場した石岡一の岩本とは4回戦で激突。途中からリリーフ登板して見事な投げ合いを展開した。延長10回、3対2で振り切った。
決勝・常磐戦で1安打完封だった。
セットポジションで長身からの角度あるストレート。そしてスライダーは130キロを超える。力を抜いて伸びのあるボールを投げるようになったという。スライダーは中学1年で、フォークは高校入学直前に習得したという。
軸足で奇麗に立って、ヒジを上手く畳んだフォームだ。
「体格がよくて、腕の振りが柔らかい。打たれたけれど上位候補に変わりない。外れの1位もあり得る。エンジンがかかる前に打たれちゃったね」
甲子園ではメッタ打ちされたが、こんなスカウトの声が聞かれた。
変化球はカウントも取れるし勝負球にもなる。ストレートでもっと空振りが取れると名実ともに本格派に近づく。
監督によると、性格が優しいそうだ。消極的な思考も見えると。確かに顔は端正な優男だ。
履正社・井上に得意のスライダーをレフトポール際に打たれたホームランは衝撃だったという。挽回のチャンスは訪れるはずだ。
(文・清水岳志)