- 高校野球
2019.10.10 17:00
メンタルコントロールを手に入れた炎の右腕
西純也(創志学園高)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 高校生編】
令和元年、奥川(星稜)、佐々木(大船渡)、及川(横浜)とともに投手四天王に数えられた。それは昨年、平成最後の夏に爛漫に輝いて、強烈な印象を残したからだ。
優勝候補と言われた創成館との1回戦、当時、自己最速149キロを計測して6者連続を含めて16奪三振、被安打4、無四球完封をやってのける。
しかし2回戦、下関国際相手に9四死球を連発して自滅。9回に2点差を逆転されて敗退した。
この2試合、西のかぶっていた帽子が投げ終わって横を向いたり、飛んで落ちたり。これが西の西たる姿だった。ダイナミックで力感あふれる投げっぷり。そして、三振に仕留めると、ガッツポーズをしてマウンド上で雄たけびを挙げる。
高校生でしかもまだ2年生。やんちゃ盛り。感情を隠すことなく表現したまでだ。
しかし、これを一年前の、この日の審判団は快くは思わなかった。
初回、ベンチに帰る途中に呼び止められる。「マウンドで必要以上に吠えるなと言われて、動揺してしまいました」
2回にもピンチを切り抜けると、雄叫びを上げていた。
そして9回、無死満塁からエラーなども出てひっくり返される。
ゲーム後、消え入りそうに言った。
「ガッツポーズは自然に出てしまうものなので」
このゲームから生まれ変わる。
感情のコントロールだ。専門の講師からメンタルトレーニングを受ける。「ピンチの時、苦しい時ほど笑顔」を肝に銘じた。毎日、ノートをつけ、感情に向き合った。味方のエラーにも平常心を保つ。すると守りやすくなったとナインに言ってもらえるようになったという。感情を押し殺した西の姿があった。
「精神的に大人になった」とスカウトが評価する。
そしてもう一つ、加えるならば、「落ちにくいように」と、今年は帽子の形を変えた。
令和の夏は甲子園で帽子を飛ばす姿は見られなかった。しかし、WBSC U-18ベースボールワールドカップで最高の評価を得る。
敵に向かう闘争心は忘れていなかった。奥川、佐々木が1次ラウンドで登板できない中、先発も抑えもこなし4試合に登板して13回3分の1、17奪三振、自責点2。防御率は1.35という数字を残す。また、レフトも守って好返球、打っては2ホーマー、そのポテンシャルも披露している。
最速は154キロ。変化球はスライダー、チェンジアップ、カーブ。スプリットも習得しつつある。
人の性格は変わらないものだ。しかし、西は自分の性格をある意味、変えることができた。
夏の最後の試合は県大会の準決勝だった。「甲子園に出て、変わった姿、成長した姿を見てもらいたいと思っていました。甲子園に行くためには、自分に何かが足りなかったということ」
足りない何かをプロで見つける。
(文・清水岳志)