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2017.04.13 12:00
【THE INSIDE】首都大学リーグは下剋上スタートとなって大混戦か…大学野球探訪(2)
今年、首都大学野球連盟のキャッチフレーズは、『今こそ、「首都」の底力。』というものだ。
4月1週目の週末に開幕したリーグ戦は、昨年の上位校と下位校がぶつかるという対戦カードでスタート。その3カードでは、相次いで波乱が起きた。
昨秋優勝の桜美林大が2部から9シーズンぶりに昇格してきた明星大に、2位の東海大は4位の帝京大に、3位の日体大は5位の筑波大に、それぞれストレートで勝ち点を落とした。大学野球では東都リーグが“戦国東都”というキャッチフレーズを用いて久しい。しかし、今季の首都大学リーグは、“混戦首都”といってもいい状況からの始まりとなった。
昨秋は桜美林大の初優勝で盛り上がって、関東選手権(横浜市長杯)も制して、明治神宮大会に初出場。桜美林大は明治神宮大会でも準優勝し、ドラフト会議ではエース佐々木千隼投手が外れ1位ながら、5球団が競合する人気となった。そんな話題も提供して、大学野球としては新鋭校の桜美林大の“底力”を示した。
それとともに、「東海大だけではないぞ」と、首都大学野球連盟の質が向上していることも認識されて、改めてリーグの存在にもスポットが当たった。
桜美林大のベンチ
それだけに、今年の首都大学野球にはどんな選手が現れるのか、どこが台頭してくるのかということで、例年にも増して注目度は上がっている。
主だった動きとして、創設当初からリーグを牽引してきた存在ともいえる老舗の東海大では、久しぶりの指揮官の交代があった。昨年のシーズン後、横井人輝前監督が退任となり、急いで後任人事を決定していかなくてはならないという状況となった。そんなこともあって、さまざまな部分でいくらか準備が間に合わなかったということは否めないようだった。
結局は当初の予定通り、Honda監督時代には都市対抗優勝という実績もある安藤強監督が就任する形で落ち着いた。ただ、諸事情が重なって、いささか慌ただしく動いたようでもあった。少なくとも、その影響はないとは言えないであろう。そんな事情も、首都大学リーグの混戦状態に拍車をかけることになったのではないだろうか。
初めてディフェンディングチャンピオンとしてのシーズを迎える桜美林大は、絶対的なエースだった佐々木千隼投手がいなくなり、投手陣に対する不安は否めない。そんな中で、安高颯希君(2年・霞ケ浦)や庄司海斗君(4年・桜美林)の投手陣に期待がかかる。打線では、佐々木投手の高校の後輩でもある工藤誠也君(4年・日野)や実績のある井橋俊貴君(2年・関東一)らの活躍が、今季の成績を左右しそうだ。
桜美林大・庄司海斗君
なんだかんだ言いつつも、やはり東海大の選手層は最も厚い。とはいえ、指揮官の交替などでの出遅れは否めない。投手陣の柱としては横川楓薫君(3年・日南学園)と青島凌也君(3年・東海大相模)がおり、やはり力はあるのだろうが、開幕週のスタートでつまずいた。
安藤新監督も、「正直、私もまだ、選手の力量やどの場面で何が出来るのかというところをつかみきれていないところもあります」と、戸惑いは隠せないという様子だ。それでも、試合を重ねていく中で確実に力を示してくるであろう。
もちろん、攻撃陣では昨秋に首位打者となった平山快君(3年・東海大相模)や下石涼太君(4年・広陵)などが、アベレージを出していくことも必須となってくるはずだ。
また、今季充実していると評価が高いのは筑波大と帝京大だ。どちらも、前季は下位に低迷していたが、帝京大は唐沢良一監督もこの春に関してはかなりの手ごたえを感じており、自信を持って挑んでいるようだ。エースの小倉大生君(4年・岡山学芸館)が軸となっていくであろうが、主将となった木下和哉君(4年・横浜隼人)が、自身もクリーンアップを任されチームを引っ張っていく。97年秋以来の優勝を目指したいところだ。
筑波大は、リーグ随一のスピードがあるとも言われている大場遼太郎君(4年・日大三)が絶対エースとなっているが、続く投手として中真慶大君(2年・首里)や大道寺拓君(4年・弘前)と言ったところが追随してくるようだと、種子島大輝君(3年・膳所)を中心とした打線は中軸がしっかりとしているだけに、06年秋以来の優勝も見えてくる。
06年秋以来の優勝を狙う筑波大
昨春の王者・日体大は、今季はやや苦しい戦いを余儀なくされそうだ。松本航君(3年・明石商)、東妻勇輔君(3年・智辯和歌山)らの投手陣の踏ん張りに期待したい。
今季、2部から9シーズンぶりの昇格を果たした明星大は、かつて初昇格後すぐの12年春に2位に浮上した実績がある浜井監督だけに、“浜井マジック”が出るようだと、今季も台風の目となる可能性も十分に秘めている。
首都大学リーグの場合は、1勝1敗となると、連戦にならず予備週での対戦ということで勝ち点は預かりとなっていく。それだけに、投手に大黒柱がひとりいると優位だ。そういう意味では、筑波大には光明が射してくる。また、会場が週ごとに異なることで、遠征の距離にも左右されかねない。首都大学リーグには、そんな東京六大学や東都リーグとは異なる、リーグの運営事情によって生じている展開の妙も絡んでくる。
リーグ戦そのものが、東海大の独壇場ではなくなってきているだけに、各校の鍔(つば)迫り合い、切磋琢磨は見逃せない。