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侍ジャパン

2度の挫折乗り越え、侍ジャパンの正捕手目指す小林遼(富士大)【2017年ドラフト候補】

北東北大学リーグに所属する富士大(岩手県花巻市)。山川穂高内野手(西武)、外崎修汰内野手(西武)、多和田真三郎投手(西武)、小野泰己投手(阪神)と4年連続でNPB入り選手を輩出している。そんな同校の大黒柱が正捕手と主将を務める小林遼捕手(富士大)だ。


小林遼(こばやし・りょう)
出身地: 秋田県秋田市出身、潟上市育ち
球歴:秋田潟上リトルシニア(硬式)→仙台育英高→富士大4年※新学年
身長・体重(ポジション):170cm・74kg(捕手)
マイブーム:料理(オムライスなど)

★捲土重来
 小林のキャッチャーミットに刻まれた「捲土重来」(※)の文字。卒業時に、仙台育英高の恩師・佐々木順一朗監督に送られた言葉を今も大切にしている。
※一度敗れたり失敗したりした者が、再び勢いを盛り返して巻き返すこと。

 仙台育英高時代には甲子園に3度出場。正捕手として初めて臨む甲子園となった3年春には打率.385、1本塁打を記録して8強入りに大きく貢献した。
 そして夏の甲子園にも出場したが、秋のドラフト会議では無念の指名漏れを味わった。NPB3球団から調査書は届いていたものの、最後まで名前が読み上げられることはなかった。同僚の上林誠知外野手(ソフトバンク)とは明暗を分ける結果となり「複雑な気持ちでした」と悔しそうに当時を振り返る。
 それでも、恩師の激励や雪辱の思いを胸に富士大へ進学すると、1年秋には大井佑磨捕手(TDK)を押しのけ、正捕手の座を奪取。小林の入学時から続いている北東北大学リーグの連覇を「6」に伸ばす大きな原動力となっている。

★まさかのコールド負け
「彼の配球、ブロックの技術、落ち着き。捕手としての資質が揃っています」と富士大・豊田圭史監督は小林を高く評価する。
 そうした能力の背景には、大学入学後初の全国舞台となった明治神宮大会での屈辱も大きな糧となっている。
 1年秋の明治神宮大会初戦・創価大戦に先発出場した小林だったが、創価大打線に先発の多和田(当時3年)が捕まり4回途中7失点でノックアウト。以後も、この劣勢を跳ね返せず、2対9の7回コールド負け。途中交代となった小林は、まさかの大敗にベンチで呆然とするしかなかった。
「自分のせいで負けたと思っています。あの経験はすごく大きかったです」
 多和田が自己最速の151km/hを計測したことでストレートに頼る単調なリードをしてしまい、ことごとく痛打を浴びた。
「配球面をもう1度見直さなければと思いましたし、試合中により考えるようになりました」と小林は思考を深めた。さらには、打撃の時間を割いてでも守備練習に力を入れ、ブルペンでは投手の球を多く受け特徴を見極め、捕手としての資質を磨いていった。
 すると、今季は自身初の日本代表となる侍ジャパン大学代表の候補選手に選出された。3月21日から始まった選考合宿で、2人か3人と予想される代表の捕手枠を4選手で争っている。
「チームとしての目標は日本一。代表では、グラウンド内外で日本代表としてふさわしい言動をして、メンバーに選ばれたいです」
 そう強く決意を語った小林。インタビューを終え、ロッカールームに戻っていく背中は、捕手としては小柄な170cmの身長よりも大きく見えた。

文・写真:高木遊