- 高校野球
2017.03.20 10:58
【奪え!主役の座③センバツ2017】 玄人好みの21世紀枠右腕・河地京太(多治見)
3月19日に開幕する第89回選抜高等学校野球大会(以下、センバツ)に21世紀枠で臨む多治見(岐阜)は、エース右腕の河地京太(3年)がカギを握る。強気かつクレバーな投球で、昨秋は岐阜県で頂点に立った。現時点で圧倒的な凄みはなくとも、プロ球団スカウトも評価する投手としてのセンスを武器に、甲子園での活躍も期待できそうだ。
★玄人が見抜く資質の良さ
多治見の大黒柱はエース・河地京太(3年)だ。新チーム発足以降、マウンドで試合を支配し、昨秋の岐阜県大会優勝の原動力となった。
自身の長所を「どんなバッターにも強気で攻められるところ」と分析する。昨秋の県大会決勝では、10点リードでも気を抜かなかった。9回裏に疲労から失点を許したが、「攻め切って終わりたい」と腕を振り、最後の打者を詰まった投手ゴロに仕留めた。ここで一歩階段を上がったことが、東海大会・至学館(愛知)戦での好投をもたらし、21世紀枠での吉報につなげた。
球速は好調時でも130キロ台前半で、これまで“ドラフト候補”として語られることはあまりなかったが、見ている人は河地を見ている。3月8日の練習試合初戦には、楽天・山田潤スカウトの姿があった。昨秋に続いての視察だといい、河地をこう評価する。
「投手としてのセンスがいい。ストレートの質やコントロール(の良さ)を見ても、今後さらに良くなっていく資質を備えていると思います」
中学時代は目立たなかったが、スジの良さは光っていた。所属していた中学硬式クラブ・岐阜東濃リトルシニアの今井茂監督(元阪急。日本ハム・今井順之助の父)も、高校での成長を予言していたほどだ。
★大人な思考で大崩れせず
スリークォーターから力強く投げ込む。高校入学後、関係者のアドバイスで腕の角度を下げたところ、投球全体がレベルアップし、体への負担も感じなくなった。「横(サイドスロー)のイメージでボールを放れたときは、スパッと強いボールがいく感じがします」と本人も好感触。プレートの三塁側を踏み、右打者外角に決まるストレートが見どころ十分だ。
大崩れしない強みもある。コントロールについて、本人は「それほど良くは
ないです。細かいところまでは意識していません」と自己評価が厳しいが、四死球を出さないだけの制球力は備える。考え方も大人で、舞い上がることがない。
「以前、球速表示が出る球場で130キロ以上出たときは少し嬉しかったですが、たとえ120キロ台でも、コースを突いたキレのあるストレートのほうが打ちづらいことも分かりました」と心得ている。
多治見は公立の普通科進学校で、練習環境の制約が大きい。グラウンドは他の運動部と共用で、部活動の時間も短い。高木裕一監督は「春から夏にかけて、チームがこれから一気に伸びそうな矢先に、(夏の大会で敗れて)チームが終わってしまう年もある。競馬でたとえるなら“脚を余す”ような感じです」ともどかしさも感じている。だがそれは、チームも選手も“伸びしろ”を秘めていることと表裏一体だ。
センバツの初戦は強豪・報徳学園(兵庫)。河地のデキがカギを握るのは間違いない。そしてセンバツが終わってからも、その伸びしろに期待し、成長を追い続けたい投手である。
文・写真=尾関雄一朗