- 大学野球
2019.04.29 13:16
来秋ドラフト1位との声も挙がる稀代のスラッガー 佐藤輝明(近畿大3年)【Future Heroes vol.10】
身長187cm96kgというひときわ目立つ体格から、目を見張る弾道の打球を軽々と飛ばす佐藤輝明。かつて全国を席巻した近畿大の復活に欠かせない存在であるとともに、将来の日本を背負う大砲としても期待を抱かずにはいられない。
「来年のドラフト1位もあるかもしれない」
既に担当スカウトの中ではそんな声も漏れている。それは逸材が揃う中でも、その存在感が際立っているからにほかならない。
昨夏の侍ジャパン大学代表の合宿では、全国から集まった有望株の中でも、ロングティーの打球は段違い。まるでピンポン球かのようにボールは軽々とフェンスを越えていった。これには代表監督を務めた亜細亜大の生田勉監督も「糸井嘉男選手(阪神)クラスではないか」とそのポテンシャルに舌を巻いた。
その秋の明治神宮大会では逆方向のレフトスタンドへ打球を運び、周囲を驚かせると、今年3月に行われた阪神二軍とのプロアマ交流戦では、フリー打撃で柵越えを連発し、阪神の選手たちも思わず見入ったほどだ。
とはいえ、高校時代まではあまり広く知られた存在では無かった。小学生時代は阪神ジュニアに選出されたが、中学時代は入学前に肘を故障していたこともあり通う中学の軟式野球部に入部。「甲子園に行きたいとかはまったく無かったです」と振り返るように「家から近いから」と仁川学院に入学した。
だが、そこで眠っていた才能が開花し始める。もともと父・博信さんは正力松太郎杯国際学生柔道大会で2位に入るなど、トップレベルで戦ってきた柔道家。佐藤も高校入学後に筋力トレーニングに初めて取り組み始めると、食事にも意識が向くようになり、体重は3年間で65kgかた96kgにまでなるなど体が大きく成長。父譲りの身体能力にパワーが加わり、高校通算で本塁打も20本ほど放った。そして「自信もついてきたので」と大学でも野球を続けることを決めると、近畿大のセレクションでもすぐ田中秀昌監督の目に留まった。
入学後は1年春から先発に起用され「守備や走塁に不調はない」と、取り組む姿勢についても丁寧に指導を受けてあらゆる面で成長スピードをさらに上げた。
昨年は日米大学野球とハーレムベースボールウィークで13打数1安打に終わったことや明治神宮大会で3試合3安打と結果を残せなかっただけに、打撃も改良。「より近いポイントで長く球を見られるように」と意識やバットの出し方を変え、阪神戦では右と左に安打を1本ずつ放った。
直近でも、2点を先制され重たい空気の中で試合が進んだ4月26日の対京大1回戦の6回に、低めの難しい変化球を左中間のフェンス付近まで飛ばす長打で1点を返した。さらに8回には四球で出塁すると、相手投手の暴投を見逃さず果敢に本塁へ突っ込みヘッドスライディング。これが決勝点となった。
「まずは近大で活躍することが大事」と目の前の戦いに全力を注ぎ、全日本大学野球選手権(6月)や日米大学野球(7月)での大暴れを目指す。
文・写真=高木遊