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ヨーロッパと世界最大の野球選手輩出地カリブの融合、「オランダ野球」【WORLD BASEBALL vol.8】

オランダナショナルチームの主砲、ヤクルトのバレンティン。若き日は出身地カリブ領の近隣にあるドミニカでプレーしていた。

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 最もハイレベルな国際大会・WBCにおいて2013年、17年と、ここ 2大会連続で4強入りしているオランダは、今や野球の強豪国となりつつある。ヨーロッパという「野球不毛の大陸」にあって強化を進められたのは、カリブ海にある海外領土の影響が大きい。
 
 かつて「オランダ領アンティル諸島」と呼ばれていたカリブ海にあるオランダ領諸島は、現在再編され、各々の島がオランダ本国との関係を築いている。その中でも、ベネズエラの沖合に浮かぶ、キュラソー島は、「オランダの野球どころ」として名を馳せている。

 この地域で野球が盛んになったのはさほど古い話ではなく、1990年代になってからのことである。1989年、のち日本球界でも活躍し、代表監督にもなるヘンスリー・ミューレンスがヤンキースでメジャーデビューを飾ると、1996年にはアンドリュー・ジョーンズがこれに続き、ブレーブスの黄金時代を支える名外野手として活躍する。

 ジョーンズもまた、選手生活の晩年を日本で過ごし、2012年の楽天イーグルス日本一の原動力となった。この2人のほか、アンドレルトン・シモンズ (エンゼルス)、ジュリクソン・プロファー (アスレチックス)、ウラディミール・バレンティン (ヤクルト)ら近年の代表チームの主力の多くはこの島の出身者である。

 また、ヤンキースの強打の遊撃手、ディディ・グレゴリウスはこの島出身の野球選手の父をもち、父のプレー先であったオランダ本国で生まれ、キュラソーで育った。

 現在、人口当たりのメジャーリーガー輩出率では、本場アメリカやドミニカ共和国をはるかにしのぐこの島は世界最大の野球選手輩出地となっている。

楽天に在籍していたルーク・ファンミルは現在、フーフトクラッセの強豪、キュラソー・ネプチューンズでプレーしている。



 このキュラソーに代表されるカリブ海諸島の野球選手のうち少なからぬものが本国のトップリーグ、フーフトクラッセに身を投じる。このリーグは、いまだアマチュアリーグの域を出ないが、有給で選手を雇うことも許され、強豪ともなると、ベンチ入り選手のほとんどはプロ契約選手で占められる。

 「カリブ組」の参入は確実にリーグのレベルを押し上げ、現在では前回名を挙げたバンデンハーク (ソフトバンク)のほか、楽天でプレーしたルーク・ファンミル (ネプチューンズ)らヨーロッパ系選手もアメリカや日本のプロリーグで活躍するようになってきている。

 フーフトクラッセの公式戦は4月から8月にかけての週末に行われる。各チームレギュラーシーズン42試合とまだまだ本格的なプロリーグになるには遠いレベルだが、シーズン中は、このリーグ戦と並行して代表チームの合同練習も行われており、代表選手には王立野球連盟から給与も支払われる。

 今やフーフトクラッセナンバーワンの投手となったファンミルは、オランダではナンバーワンの高給取りと胸を張るが、それでも、その報酬は月50万円ほどだという。


文・写真=阿佐智