BASEBALL GATE

侍ジャパン

平野佳寿を侍ジャパンのクローザーに推したい3つの理由
記事提供=Baseball Crix

(C)共同通信

侍ジャパンの小久保裕紀監督は「投手を中心にした守りというところは一番」と投手陣に自信を見せる。そんななか、ブルペン陣の基軸となるクローザーは明言されていない。そこで今回は、守護神候補を中心に救援陣の個々の役割について、データから考えてみる。

三振の取れる投手は誰?

(C)共同通信

 野球の試合では、どんな打ち取った打球でもフェアグラウンドに飛べば、ヒットやエラーの可能性が付きまとう。そのため、アウトカウントを稼ぐには三振を奪うのが最も確実な方法だ。ことに守護神の奪三振能力が重要視されるのは、そのような背景もある。今回、侍ジャパンの救援候補のなかで最も奪三振率が高いのは松井裕樹(楽天)だった(表1参照)。昨季50イニング以上登板した日本人投手で、大谷翔平(日本ハム)に次ぐ数字。奪三振という観点では、若き左腕クローザーが高い評価を得る。

安定感に優れる投手は誰?

 しかしその松井には、与四球が多いという不安もある(表2参照)。2015年に行われたプレミア12でも準決勝の韓国戦で9回に押し出し四球を与えるなど、制球面の安定感を欠く場面もあった。

 そこで奪三振を与四球で割ったK/BBという指標を見ていく。三振をひとつ奪うのにいくつの四球を与えたか、という指標で、数字が高いほど優秀な投手となる。奪三振と与四球は守備や球場から影響を受けないと考えられているため、純粋な投手能力を表しているとされる。この指標で優れた数字となっていたのが、秋吉亮(ヤクルト)や岡田俊哉(中日)、平野佳寿(オリックス)だ(表3参照)。特に平野は、最優秀中継ぎ投手賞、最多セーブのタイトルをそれぞれ1度ずつ受賞したリリーフのスペシャリスト。実績は侍ジャパンの面々のなかでもトップクラスだ。

代名詞となるボールを持つ投手は誰?

 NPBの伝説的な守護神を振り返ると、“佐々木主浩(元横浜)のフォーク”や“高津臣吾(元ヤクルト)のシンカー”など、代名詞となる変化球を持ち合わせているケースが多く見られる。奪空振り率という側面で抑え候補の変化球を調べると、トップとなったのが松井のチェンジアップで26.2%。次いで平野のフォークが22.7%を記録しており、これらのボールは必殺と呼ぶにふさわしい決め球といえる。過去の大会で上原浩治(現カブス)のスプリットや岩隈久志(現マリナーズ)のフォークが次々と強打者を仕留めたように、国際試合では縦の変化が有効との見方もある。各人が公式球への対応を完了していれば、これらの決め球が高い威力を発揮するはずだ。

 奪三振能力、安定感、決め球と3つの観点から候補者を評価してきた。松井の奪三振能力の高さは魅力だが、総合的に考えるといずれの項目でも上位に顔を出した平野に分があるようだ。したがって、本稿では侍ジャパンのクローザーに最も適した投手は平野である、と結論付けたい。

 ここからは、それ以外の救援陣の役割にも触れてみよう。

他にも安定感を示す指標

(C)共同通信

 出塁を許さない投球も安定した内容につながるひとつの要素である。1イニングあたりの被安打や与四球による許走者数を示すWHIPという数値を見ると、優秀な成績を残したのは牧田和久(西武)や秋吉だ(表5参照)。サイドスローの秋吉は、奪三振率でも8.74と高水準。さらに変則投手が活躍しやすいとされる国際試合ということもあり、終盤の重要な場面での“火消し”としての期待は大きい。

 昨季の牧田はロングリリーフを務める機会も多かった。救援で2イニング以上登板した回数は12球団トップの19試合で、その際は防御率0.56をマークしている(表6参照)。よって、今大会ではブルペンの便利屋として起用するのが適切であるのかもしれない。

対左のエキスパートは誰?

 左のワンポイントも救援陣では重要な役割とる。候補は左腕の岡田と宮西尚生(日本ハム)だ。2人の左右打者別被打率に目を移すと、くっきりと明暗が分かれる。球筋のきれいなストレートが持ち味の岡田は左打者をやや苦手としているのに対し、宮西はスライダーを武器に左打者に対して被打率.154をマーク。さらに宮西は右打者被打率も1割台と、打者の左右を問わずヒットを許していない(表7)。

 また、宮西はいわゆる“火消し”の場面を得意としている。登板時に背負っていた走者(以下IR)をホームに生還させなかった割合を示すIR率では、毎年のようにNPB平均以下の数値をマーク。昨季はIR人数22うち1人しか得点を許さなかった(表8)。ただ単に、左のワンポイントとして使うにはもったいないほどの成績である。

侍ジャパン 勝利の方程式を考える

(C)共同通信

 仮にクローザー・平野という前提から考えてみると、8回はともに左右打者を問わず勝負できる秋吉と宮西を併用するのが理想だ。そして、牧田や岡田は緊急登板に備える形が適切であると結論付けられる。

 クローザーについて、指揮官は「そのときの状態の良い投手を使う」と日替わりで臨む旨を口にしている。この意向もあってか、今回のメンバーには所属チームで抑えを務めた経験がある投手が5人選出されており、過去と比べても多くなっている。もし日替わりクローザーとなるならば、個性豊かな候補をどのように使い分けるか。首脳陣の手腕が問われそうだ。
※文章、表中のデータはすべて2016年シーズン終了時点

(著者プロフィール)
データスタジアム株式会社
スポーツデータの解析や配信を手掛けるスペシャリスト集団
URL:http://www.datastadium.co.jp/

(記事提供)
Baseball Crix
URL: https://bbcrix.com/