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2017.01.26 18:33
今年ブレイク必至 恩師が語るオリックス吉田正尚、フルスイングの秘話
昨シーズン、球団史上31年ぶりとなる新人で2ケタ10本塁打を放ったオリックス・吉田正尚外野手。シーズン終盤に持ち味の豪快なフルスイングで本塁打を量産。オフに参加した台湾ウィンターリーグでは、打率、安打、本塁打の3冠となり、ズバ抜けた成績で最優秀選手を獲得した。なぜ、吉田は173センチの体でアーチを描けるのか。青山学院大野球部で1~3年時にコーチ、4年時から監督として指導した善波厚司監督(49)に、今年ブレイク必至の教え子のスゴさを聞いた。
■「守備も足も肩も」平凡だった高校時代、それでもスカウトした理由
昨シーズン、球団史上31年ぶりとなる新人で2ケタ10本塁打を放ったオリックス・吉田正尚外野手。4月に負った腰椎椎間板症で出場は63試合にとどまったが、シーズン終盤に持ち味の豪快なフルスイングで本塁打を量産。オフに参加した台湾ウィンターリーグでは、打率、安打、本塁打の3冠となり、ズバ抜けた成績で最優秀選手を獲得した。なぜ、吉田は173センチの体でアーチを描けるのか。青山学院大野球部で1~3年時にコーチ、4年時から監督として指導した善波厚司監督(49)に、今年ブレイク必至の教え子のスゴさを聞いた。
吉田は福井県の強豪、敦賀気比高から青学大に進学した。173センチと小柄だが、スイングの強さは高校時代から目を見張るものがあった。そのスイングに注目したのは、青学大のスカウトを担当していた秋田商の元監督、小野平氏だ。小野氏は秋田商から青学大に進学した石川雅規(現ヤクルト)を高校時代に指導していた。善波監督は当時を、こう振り返る。
「高校の時から強く振れるバッターでした。守備が上手いわけでもない、足が速いわけでも、肩が強いわけでもない。それでも、高校生であれだけ強く振れる打者はいないとスカウトしてこられたようです」
東都大学リーグの伝統校に進学した吉田は、入学当初からプロを目指していた。
「野球部の入寮式で新1年生があいさつをするのですが、ほとんどが『早くチームに溶け込めるように』とか『早く戦力になれるように』とか言う中で、正尚だけは『青学に、プロに行くために来ました』と言ったんです。入学当初からプロ志向は強かったですね」
プロ入りを有言実行する。そのための探求心も並外れたものがあった。2年生の頃から、重いバットや長いバットなど、さまざまな種類のバットを使って練習していたという。
■マイペースだった吉田の意識を変えた2人の存在とは
「ティーバッティングの時、バランスボールの上に座って打ったりしていました。自分でいろいろ情報収集をしながら、上手くなろうと実践していたんだと思います。『こういうやつがプロに行くんだろうな』と、その頃から感じていました。」
チーム内では非常にマイペース。「自分が野球をやっていればいい」という雰囲気だった吉田が変わったのは、4年の春、第28回ユニバーシアード競技大会の大学日本代表選考合宿に参加してからだ。
「後に本人が話していましたが、選考合宿に参加していた茂木栄五郎(早大、現楽天)、高山俊(明大、現阪神)選手が、とにかく野球に対しての取り組み姿勢が真摯で一生懸命だったようです。代表には3年連続で選出されていましたが、4年になり、プロを目指している2人の姿を見て、意識が変わったと思います。チームに戻ってからも、後輩に『こういう投げ方をした方がいい』など、アドバイスをするような声も出るようになりました」
リーグ戦でのプレーも、あまり好不調の波がなくなり、常に安定した結果を出し、風格も出てきたと善波監督は話す。
「3割5分を打っていた時期もあったのですが、チャンスで力んで打てないことが多かった。それが4年のリーグ戦では、チャンスで打つようになったんです。非常に勝負強くなりました」
ユニバーシアードでは全試合で4番を打ち、チームトップとなる5打点の活躍。金メダル獲得に貢献した。プロ入りを間近に控えた選手たちの姿を目の当たりにして、練習に対する心構えや姿勢、日頃からの行動も変化した。
■ドラ1への転機…勝負のドラフトイヤーに2部降格、芽生えた「反骨心」
そこで変われたのは、吉田の意識や感性が高かったことに加え、東都2部に甘んじているチーム状況もあったのではないかと、善波監督は考えている。3年秋の入れ替え戦で降格が決まり、勝負のドラフトイヤーを2部で戦う結果になってしまった。
「2人は六大学でも注目されていました。うちは東都の2部。よほど活躍しなければ、取り上げられません。そういう反骨心もあったと思います」
この精神的な成長が、吉田をドラフト1位に押し上げる転機となった。
「3年までの成績でも、3位か4位くらいではプロに行けるとは思っていました。それが4年のリーグ戦で、勝負強さとプレーでの安定感が増してきたからでしょう。ドラフトの直前に1位指名のお話を頂くことができました」
「プロでもある程度は活躍するだろう」と思っていたという善波監督。「けがさえなければ」と心配しながらも、教え子のさらなる飛躍に期待を寄せる。
「やはりモノが違います。ほかの『プロに行きたい』と言っている選手とは、思考力や行動力が違いました。プロでもある程度は活躍できるとは思います。あのスイングは魅力ですから、あのスイングをなくさないように、体幹や下半身の強化は勿論、柔軟性や可動域をしっかりと作っていく練習などもして、けがをしない体を作っていって欲しいですね。」
仲のいいチームメートが練習を上がるからといって、一緒に上がるということは絶対にしない。黙々と、自分のやると決めたことは必ずこなしていたという。「とにかく、自分のスイングで強く振れることを考えていたと思います」
2年目の注目株。見る人を魅了するあのスイングで、今シーズンは何本のアーチを描くのか。吉田の活躍が楽しみだ。
篠崎有理枝●文 text by Yurie Shinozaki