BASEBALL GATE

侍ジャパン

【Baseball Gate Analysis】大谷翔平だけじゃない?バットを握っても個性のある投手たち

※データはすべて2016年シーズン終了時点

 2016年に投手とDHの2部門でベストナイン、さらにパ・リーグのMVPにも輝いた日本ハム・大谷翔平。最速165キロのストレートを中心に防御率1点台、奪三振率11.19を記録する投手としてのパフォーマンスに、規定打席に届いていないにも関わらず22発を放つ打力を併せ持つ若き怪物には、驚嘆せざるをえないだろう。

表A

 投手と野手のバッティングを比較すると、打率という点で見ても違いは明らか。各ポジションの野手が平均して2割台の前半から後半を記録しているのに対して、投手の平均打率は1割を少し超えたぐらいしかない(図表1参照)。野手としての出場時は主にクリーンアップを務める大谷が、いかに異質な存在であるかがよく分かる(図表2参照)。
 さて、今回のコラムではこの大谷ほどではないにせよ、投手登録ながら打者としての資質を持つと考えられる選手を、2つのデータから探りたい。

■優れた選球眼を持つ広島・野村

表B

 まずボールゾーンに投じられた投球をどれだけスイングしたかを示す、ボールゾーンスイング率を見ていく。ボール球に手を出さないことは、打撃のセオリーのひとつ。この数字で投手としてNPBトップだったのが、広島・野村祐輔(図表3参照)。今季最多勝のタイトルを獲得した野村は打率.163をマークしており、自らのバットでピッチングを楽にしている。5年間のキャリアでボールゾーンスイング率が20%を超えたことが一度もなく(図表4参照)、野手顔負けの優れた選球眼を持っている。

■小さな強打者、ヤクルト・石川

表C

 ヒットを打つためには、バットを振ってボールに当てる必要がある。そこでスイング時に空振りが少なかった割合を見ると、ヤクルト・石川雅規が最も良い数字を残していた(図表5参照)。プロ15年目の今季こそ34打数1安打と“打撃不振”だった石川だが、通算打率.164は現役の投手の中では頭ひとつ抜けた存在だ(図表6参照)。本業のピッチングでも8勝8敗、防御率4.47と不満の残る結果だっただけに、2017年は投打ともに復調を期待したい。

■ボールを振らず、空振りも少ない投手は?

 最後に図表3と5で用いたデータを元に、ボール球への対応と空振りの多寡を散布図にしたのが図表7だ。右上に位置するほどボール球を振らず、空振りが少ないことを示す(円は大きいほど高打率)。やはり野村のバッティングセンスの高さは散布図の上でもよく目立つ。ルーキーながら8勝を挙げたDeNA・今永昇太も良い位置に付けていて、バッティングにも期待できる一人と言えそうだ。

 今回の検証では2つの要素に絞って投手が持つ資質を探ったが、もちろんこれらがバッティングのすべてではない。図表7で最もボール球に手を出し、かつ空振りも多かった中日・バルデスは、来日2年間で平均を上回る打率.128をマーク。10安打のうち4本が長打とパワーのあるところを見せている。多少の荒っぽさはあっても当たれば大きいというスタイルは、ロマンのある助っ人大砲さながらだ。

 ひとくくりに語られやすい投手のバッティングだが、大谷以外にも個性豊かな“打者”が潜んでいる。平均で打率1割ほどしかない投手たちの打席に注目するのも、17年シーズンの楽しみ方のひとつとして提案してみたい。

文:データスタジアム