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【THE SPIKE】侍ジャパン、絶対的な捕手不在で迎えるWBC…求められるものとは


2017年を迎え、いよいよ「第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の開催が目前に迫ってきた。

第3回WBCでは準決勝でプエルトリコに敗れ、2015年11月に行われた「世界野球WBSCプレミア12」では、準決勝で韓国にまさかの逆転負けを喫した。今大会での王者奪回は日本全国の野球ファンの悲願だ。

状況は、2008年の北京五輪で韓国に2度敗れた上にアメリカにも2度敗北。日本野球の威信をかけ、リベンジを誓った2009年の第2回WBCを迎える前の雰囲気にも似ている。

野球日本代表・侍ジャパンが王者奪回を果たすため、さまざまな課題が議論されているが、今回はその中でも特に重要視されている「捕手」に焦点を当ててみる。

■これまでは絶対的な捕手が存在した

試合をつかさどる司令塔の役割を果たす捕手。その存在が勝敗におよぼす影響力はとてつもなく大きい。過去のWBCでは絶対的な捕手が存在して日本の躍進を投打の両面から支えた。

2006年に開催された第1回WBCでマスクをかぶったのが、里崎智也(当時ロッテ)。前年日本一に輝いたロッテの正捕手を務めた男は、松坂大輔(当時西武)や上原浩治(当時巨人)らを中心とした投手陣をリードで牽引。打っては打率.409、5打点と活躍し、レギュラーとして出場した選手の中では、松中信彦(当時ソフトバンク)に次ぐ打率を残した。出塁率は脅威の.458。攻守でチームを牽引した。

攻守でチームを牽引した里崎智也(c) Getty Images
2009年開催の第2回WBCで正捕手を務めたのが、城島健司(当時シアトル・マリナーズ)。現役メジャーリーガーとして参加し、類まれなリーダーシップと強打で連覇に貢献。4番にも数試合座って打率.333を残すなど圧倒的な存在感を示し、その強肩では幾度となくチームを救った。

リーダーシップを発揮した城島健司(c) Getty Images
記憶にも新しい第3回WBCでマスクをかぶったのが阿部慎之介(巨人)。全試合で4番に座り、打率.261ながら、2本塁打を放ち、チームトップの7打点を挙げて打線を牽引した。

勝負強さを見せた阿部慎之助(c) Getty Images
■捕手の存在が勝敗を分けた、あの試合

捕手の存在が勝敗を分けた試合がある。第3回WBCの準決勝、日本対プエルトリコの試合だ。相手捕手は現在もメジャーリーグの第一線で活躍するヤディアー・モリーナ(セントルイス・カージナルス)だった。

この試合で日本の打線は、メジャー最高峰の捕手・モリーナただ一人にやられたと言っても過言ではない。特に優れた投手がいなかったプエルトリコの投手陣を巧みなリードで牽引し、プエルトリコの準優勝に貢献した。

メジャー屈指の捕手 ヤディアー・モリーナ(c) Getty Images
日本の試合で先発したマリオ・サンチアゴは、2013年にロサンゼルス・ドジャースとマイナー契約を締結した選手だったが、それまでのマイナーリーグの成績は36勝51敗。直球が速いわけでも、特筆すべき変化球があるわけでもなかったが、モリーナのテンポの速い、頭脳的なリードに日本の打線は翻弄された。

試合を支配し、日本の3連覇を阻んだ(c) Getty Images
モリーナは試合前の日本の打撃練習を見ていて、こう感想を述べている。「日本の打者は打つまでの準備にかなりの時間をかけているように感じる」。息をつく時間も与えず、ハイテンポで投手に投げさせるリードで日本の打線は完全にリズムを狂わされた。

モリーナは司令塔に相応しい働きを見せ、試合を支配した。まさに捕手の存在が勝敗を分けた試合だった。

■捕手に求められるのは安心感

過去のWBCのように“打てる捕手”であれば、それに越したことはないし、モリーナのような絶対的な捕手がいれば心配はいらない。

では、侍ジャパンは絶対的な捕手がいないという状況に、どう対応していくべきだろうか。

連覇に貢献した岩村明憲(c) Getty Images
第1回WBC、第2回WBCに出場し、連覇に貢献した岩村明憲(第1回WBC当時ヤクルト、第2回WBC当時タンパベイ・レイズ)は、当時のことを「日の丸を背負って戦う試合は、口から心臓が飛び出そうでした」と振り返り、続けて「捕手が試合によって違うよりも、毎試合同じ捕手でいてくれた方が内野陣にも安心感が生まれる」とし、捕手は固定すべきであることを力説していた。

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2016年12月20日に第4回WBCに出場する侍ジャパンの一部メンバーが発表され、選ばれた捕手は大野奨太(日本ハム)と嶋基宏(楽天)だった。

大野には、2016年に日本一を成し遂げた日本ハムの司令塔であるという旬な勢いと、リード、キャッチング、送球といった守備面での能力が期待される。シーズンの打率は.245と貧打は否めないが、得点圏打率は.290と上がる。2016年パ・リーグの最多勝に輝いた和田毅(ソフトバンク)は、「大野君はチャンスでよく打っているイメージがある」と語っている。

日本ハムの司令塔 大野奨太(c) Getty Images
事実、昨年11月に行われた強化試合ではサヨナラ打を放つなど、シーズン同様に勝負強い打撃をアピールした。侍ジャパンに選出されている大谷翔平、増井浩俊、宮西尚生(日本ハム)とチームメートで、普段からバッテリーを組んでいるという利点もある。そうしたことは、投手にとっての安心感にもつながるだろう。

嶋は、小久保裕紀監督が侍ジャパンの指揮官に就任して以来、最もマスクをかぶり、過去には主将にも任命されるなど、小久保監督が絶対的な信頼を寄せている。

侍ジャパンの元主将 島基宏(c) Getty Images
2016年は試合中の左手豆状骨骨折により80試合の出場にとどまるなど精彩を欠いたが、プレミア12で正捕手を務めた経験も大きい。

捕手はあと一人召集される見込みだが、チーム全体への安心感をもたらすという意味では、2016年広島のリーグ優勝に貢献した石原慶幸(広島)や炭谷銀仁朗(西武)らのベテラン捕手がWBC経験者でもあることも踏まえると適任か。

侍ジャパンは3月7日、WBCの開幕戦でキューバと対戦する。マスクをかぶるのは大野か、嶋か。いずれにせよ、投手と野手に“安心感”をもたらすことのできる正捕手の存在が、勝敗を分ける鍵となる。

里崎智也 参考画像(2006年3月18日)
阿部慎之助 参考画像(2013年3月12日)
城島健司 参考画像(2009年3月5日)
ヤディアー・モリーナ 参考画像(2013年3月9日)
ヤディアー・モリーナ 参考画像(2013年3月17日)
侍ジャパン強化試合での大野奨太 参考画像(2016年11月10日)
侍ジャパン強化試合での嶋基宏 参考画像(2016年11月12日)
岩村明憲 参考画像 (2009年3月19日)
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