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2018.05.30 11:15
【THE INSIDE】都市対抗野球東海地区二次予選で“黒豚しゃぶしゃぶ”と“味噌カツ”がガチンコ対決…社会人野球探訪
黒豚しゃぶしゃぶと味噌カツ――。どっちを食べたいのかという話でも、夕食としてどちらがビールとの相性がいいのか…という話ではない。社会人野球の公式戦である。しかも、東京ドームの出場権を争う都市対抗野球東海地区の二次予選での対戦である。
図らずも、今や名古屋名物となっている味噌カツの発祥店とも言われる矢場とんチェーンと、全国で29店舗ある芋蔵チェーンで知られる黒豚しゃぶしゃぶなどの料理をメインとした居酒屋を展開しているジェイプロジェクト。どちらも社会人野球の東海地区に所属するチームである。
矢場とんブースターズはクラブ登録ということで、都市対抗野球の予選は一次予選からの登場となっている。そして、4月の愛知県予選を勝ち上がって二次予選に出場権を得ている。これに対してジェイプロジェクトは企業チーム登録で、2012(平成24)年には二次予選を勝ち上がって本大会に出場したという実績もあるチームだ。今年は、6年ぶりの出場を狙えるだけのチーム力が整っているという。
野球の力的には、やはり企業チームとしての強化体制のとれているジェイプロジェクトがやや上かというところであろうか。
ジェイプロジェクト・大石大二郎監督
チームを指揮するのは、どちらもプロ野球経験者だ。ジェイプロジェクトは大石大二郎監督で、静岡商→亜細亜大を経て80年のドラフト2位で近鉄入り。2年目の82年には打率2割4分7厘と47盗塁で新人王を獲得している。そして翌83年は60盗塁を記録して盗塁王を獲得。盗塁王はプロ野球実働17年間のうち4度獲得している。引退後は丁寧で誠実な解説として定評があったが、近鉄のコーチなどを経て、ジェイプロジェクトの監督に就任した。また、ジェイプロジェクトの辻本弘樹部長は前監督で、智弁学園から87年に中日入りしている。
矢場とんブースターズの片貝義明監督は、前橋工→日本石油(現JX-ENEOS)を経て、72年のドラフト2位で中日に入団。引退後はスコアラーや二軍コーチ、一軍コーチなどを歴任して、矢場とんブースターズの立ち上げに参加。当初は元中日のドラフト1 位の藤王康晴監督就任で華々しくスタートしたものの、諸事情で藤王監督から引き継ぐこととなった。
そして、今年度からコーチとしてやはり元中日で名古屋産業大監督なども務めていた高橋三千丈コーチも就任。ちなみに、高橋コーチは静岡商ではジェイプロジェクト大石監督の2年先輩にあたる。明治大を経て78年のドラフト1位で中日入りしている。この両チームが第89回の都市対抗野球の出場権を争う東海地区の二次予選の1回戦で対戦することとなったのだ。
◆2018年5月22日(火)岡崎市民球場
第89回 都市対抗野球大会 東海地区二次予選 第一代表決定戦1回戦
8回コールドゲーム
ジェイプロジェクトは、初回に二死二塁に安打で出た1番の田中鳳真(京都翔英)を置いて、4番・長田雅輝(札幌光星→東海大北海道)のタイムリーで先制。しかしその裏、矢場とんは一死一三塁でジェイプロジェクト先発の白崎塁(札幌日大→駒澤大)の暴投と4番・秦広明(我孫子東→関東学院大)の犠飛で逆転。さらに3回にも矢場とんは1番・加藤俊介(三好→日本福祉大)が中前打で出ると、内野ゴロで進み、北野力(北大津→中京大)のタイムリー、さらに5番・金丸竜也(近大附→佛教大)の右前打で追加点を挙げてリードした。
そして、先発片山武士(碧南工→一愛知学泉大)が好投していたが、故障明けで間もないということもあって、片貝監督は大事を取って5回で降板。二番手として國廣佳二朗(大牟田→九州産業大)を送り込んだがこれが裏目となった。四死球とバント野選で満塁となり、まずは前畑宗慶(中京大中京→中京大)の右前打で1点を返す。さらに、たまらず送り出した3人目の納谷直大(枚方津田→京都学園大)に対しても進藤辰弥(須磨翔風→上武大)や原野風騎(大商大堺)の二塁打などで、とどめは一番・田中鳳の左中間三塁打が出て一挙8点。試合が決してしまった。
バッテリーにアドバイスする矢場とん・片貝義明監督
ジェイプロジェクトは7回にも、またも原野の二塁打などで4点、8回も2点を加えてリードを広げ、前半の展開からは予想もつかなかったコールドゲームとなってしまった。しかし、爆発力はあるという今年のジェイプロジェクトの力を示す戦い方だった。
矢場とんは敗者復活に回り、その後は第3代表決定トーナメントの1回戦で三菱重工名古屋に善戦するも、敗れて本大会出場の夢は途絶えた。しかし、すぐに目指すところの全日本クラブ選手権の愛知県予選が控えている。