- 高校野球
2016.11.16 13:02
まだまだ発展途上 主将・清宮幸太郎の人間力が引き上げる早稲田実業の強さ
清宮幸太郎が全国準優勝で高校2年のシーズンを終えた。明治神宮大会の3試合で彼は7打数5安打1本塁打を記録。加えて7個の四死球も受けている。全国の好投手に対するこの結果は、改めて彼の実力を示すものだった。
彼は神宮大会の成果をこう説明する。
「この大会を通じて得たものも大きい。みんながたくさん公式戦を経験できたというのもありますし、こうやって最後に負けることで次につながると思っている。この前(15年)の夏はベスト4でしたが、次はこうやって決勝に来れたので、あとは優勝しかない。ステップアップという意味では着実に来ている」(清宮)
今年1年間で特に印象に残った試合は何か?そう問われた清宮は少し考えて「まず八王子戦ですね。それと(日大)三高戦。あと今日(の履正社戦)」と3試合を挙げた。
16年夏の甲子園を逃す悔しい負けになった西東京大会の準々決勝。チームは勝利したものの日大三高の左腕・櫻井周斗に5三振を喫した秋季東京都大会決勝。そして履正社に敗れた明治神宮大会の決勝戦――。すべて彼が喜びでなく悔しさを味わった試合だ。
「八王子戦の負けが今回につながっていると思う。あの経験も無駄ではなかった」と彼は振り返る。そして15日の決勝戦を6-11の敗戦で終えてなお「勝ちより負けから得るものが多いので」と清々しい顔を見せていた。
3年生が夏の大会で引退した後、彼は早稲田実業のキャプテンに就任している。この大会でも当然、彼のチームを引っ張る姿勢があった。
彼の父・克幸さんは高校日本代表、早稲田大、サントリーの主将を務め、母校・早大やヤマハの監督として実績を残しているラグビー界の名リーダー。清宮の前向きな発想、包容力には間違いなく父から受け継いだ部分がある。
投手陣がチームの課題なのでは?と問うた記者に対して、彼はこう返した。
「中川(広渡)も赤嶺(大哉)も、都大会ではよく抑えてくれていた。真っ直ぐの伸びも、入ってきた当初から確実に変わっている。(決勝戦の)序盤は打たれましたけれど、そのあとに池田(徹)が本当に上手く抑えてくれた。レベルアップしなければいけない部分はありましたけれど、自信もついていると思う。ここからどう成長していくかが勝負です」(清宮)
彼が名を挙げた中川、赤嶺、池田の3投手はいずれも1年生。球速も常時120キロ台後半程度と、発展途上であることは間違いない。しかし彼らの力が無ければ都大会を勝ち抜くこともなかったし、全国の決勝に立つこともなかった。後輩の努力と成果を認め、感謝を語るところに彼の気配りを感じた。
来春の選抜大会が終わると、2学年下の新入生も入部してくる。
「今(の早実)はやり易い環境が持ち味という部分もある。のびのびプレーしてもらえるような環境を作れればと思います」(清宮)
相手の投手から見れば、これほど恐ろしい男はいないだろう。しかし人間・清宮はそんな優しさも持っている。
文=大島和人
写真=山本晃子