3打点の活躍を見せた履正社・松原任耶

今や高校野球界で全国屈指の強豪校・履正社には、こんな逸材が潜んでいる。背番号16、高校通算本塁打はまだ0本の1年生・松原任耶が3打点でチームを2回戦に導いた。

松原は2回二死2塁からセンター前タイムリー安打でチームの先制点を叩きだすと、6回二死2、3塁からセンターの頭上をライナーで破る2点タイムリー三塁打。いずれも試合の流れを大きく動かす貴重な打点だった。

驚いたのは打球の勢い以上に、その走り――。「この身体でも動けるというところに自信がある」という50ⅿ6秒2の俊足で、彼は悠々と三塁を陥れた。

186㎝・84㎏という偉丈夫で、現在の守備位置は一塁。ただ北河内大東ボーイズ時代はショートを任されていたという。「柔軟性がない」と語る課題もあり、高校ではまだショートを任されるほどの信頼を守備で得られていない。ただ今後に向けて「ショートを目指してやりたい」という意欲も持っている。

昨夏の甲子園はベンチ入りしておらず、中学時代も含めてこれが全国初舞台だ。松原は「こういう大きい大会は初めてなので緊張もしています」と心境を説明するが、そんな彼が今日のヒーローになった。

一方で松原はタレント軍団・履正社にあって、まだ定位置を掴んでいない。2回の先制打も彼にとっては公式戦初打点だった。同じ1年生でも2番・ショートの西山虎太郎、5番・センターの筒井太成がチーム内の地位では先んじており、彼も「西山とか筒井は春からずっと出ていたので、悔しい気持ちがあった」と口にする。

この日は仙台育英の先発・長谷川拓帆が左腕だったため、右打者の彼が起用された。打順も8番で「つないだら次の回1番からという可能性が高くなる。つなぐ意識だけで打席に立ちました」と打撃の狙いを説明する。彼は「そんなに弾道の高いホームランは無くて、ライナーが多い」という中距離打者タイプで、中学時代の打順も主に1番と3番。バットを短く持ち、コンパクトに振ることが自然と身についている。

「小学生のときは水泳とサッカーとソフトボールをやっていた。兄弟全員サッカーと水泳はやっていたので。兄はバスケ、弟はサッカーをやっていて、父はラグビーをやっていた」というスポーツ一家に生まれ、色んなスポーツと接したことが、万能アスリートの成長を利したのだろう。

今日見せた勝負強さはもちろん、この体格とスピードを見ると今後が楽しみになる。打球に角度がつけば、本塁打も増えるだろう。エース・竹田祐、主砲・安田尚憲と注目選手は豊富な履正社だが、特大のインパクトを感じさせてくれたのが1年生・松原のプレーだった。

履正社　┃０１０｜００２｜２００┃５
仙台育英┃０００｜０００｜１００┃１

仙台育英：長谷川、佐藤、加藤、佐川、西巻－尾﨑、渡部
履正社：竹田－片山

文=大島和人
写真=山本晃子