- 高校野球
2020.10.22 18:00
高校ビック4の一人 153キロストレートとカーブのみ 山下 舜平大(福岡大大濠高)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 高校生編】
全国区デビューで、まず、感激を口にした。甲子園での合同練習会のことだ。
「初めてだったので、グラウンドに入った瞬間に感動しました」
二日にわたって行われたアピールの場。初日、キャッチボールを見ただけでスカウト連中が驚いた。
「あのキャッチ―ボール、見ましたか。ボールの質の良さが、スタンドから見ただけでわかりました」
甲子園のレフトからセンター方向には浜風が吹いていて普通はボールは押されるのだが、山下の投じたボールは助走をしなくても低く、糸を引くように相手のグラブに収まった。
翌日はシート打撃に登板。打者5人に対して1安打1四球3奪三振。その1安打は、補助参加していた大学生に打たれたもので、さらに参加者でただ一人の150キロを記録した。
自粛期間明けの最初の練習試合で自己最速を7キロも更新して153キロをたたき出し、1位候補に躍り出た。高校〝ビック4〟の仲間入りだ。
自粛中は股わりをしたという。軸足の左足に体重を乗せてから、右にもしっかり移し返す。下半身強化につながり安定。球速が増した。
中学校では軟式野球部で投手と捕手を経験。中3で県選抜に選ばれ全国準優勝を果たした。軟式経験者が育つと言われる福岡大大濠に進学して、八木監督と出会う。
プロに行けば、変化球はいろいろ覚えられる。今は一つでいい。八木監督はカーブ以外の変化球は封印しろと、1年秋に伝えたという。これでカーブの精度が上がる。カウントを取る、打者を崩す、空振りを取るものと3種類、110キロから120キロを投げ分ける。
「回転が多いから落差がある。高校生離れしたカーブで、彼の能力の高さを物語っている」とスカウトが評する。
本人は「とことんカーブを研究しよう。こだわりを持ててプラスになっている」という。
練習会でもカーブで三振を取ることが出来て、持ち味になっている証明になった。
フォームは左足の踏み出し幅が狭く、上半身だけの印象がある。沈み込みが少ないのは、本人が高さを意識しているからだという。189センチという身長、上からの角度は他のピッチャーにはない長所なので生かす、と話す。
平均145キロ後半のストレートは、まだまだ速くなりそうだ。八木監督は「スピードは出し切っていないと思う。本人も気が付いていないんじゃないか」という。エンゼルス・大谷翔平級のストレートになる可能性がある。
多くのスカウトは絶賛だ。
「球速を出せる大事なポイントを持っている。打者はマウンドが近いと錯覚するんじゃないか。数字以上に体感は速いはず。圧がある。将来はプロでエースになれる素材。完成した姿が想像できないぐらい可能性がある。エンゼルスの大谷選手や斉藤和巳(元ソフトバンク)投手のようなスケール感がある」
軟式出身者ならではの伸びしろもあるはず、という声もある。
名前の由来は20世紀前半に活躍した経済学者 ヨーゼフ・シュンぺーター。イノベーション理論を唱えた偉人で、この若者も何年か先に大きな革新をもたらすかもしれない。