- 大学野球
2020.10.20 18:23
俊足強肩の「バネ系」隠し玉捕手 上地ケンジ(同朋大)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 大学生編】
10月にプロ志望届を提出した“隠し玉”の捕手だ。大学4年間を愛知大学リーグ2部で過ごし、全国的には無名。しかし地元・中日が9月のリーグ戦を視察するなど、指名候補に挙がっている可能性がある。ドラフト会議で名前が呼ばれれば、豊田清(西武コーチ)、同朋大の手綱をとる馬渕隆雄監督(元西武)に次いで大学史上3人目のNPB入りとなる。
身長168センチ、体重66キロと小柄だが、身体能力が高い。本人が「昔から『バネ系』とほめられました」と話すように、体に秘めるバネは一級品だ。捕手として遠投110メートルの強肩を誇る一方、50メートル走6秒1とスピードにも優れ、2番打者を務める。ブラジル人の母を持つ。
スローイングも高水準。プロ経験のある馬渕監督が「この地区ではトップレベルでしょう」と認めるほどだ。二塁送球タイムは2秒を切り、自己最速で1秒72を計測したこともあるという。俊敏な送球のコツは、本人いわく「絶対にフットワーク。腕は勝手についてくる。自信がある部分です」。
静岡・藤枝明誠高のころは目立つ存在ではなかった。高校1年冬に内野手から捕手へ転向。「捕手としてそんなに実績はなかったです」と振り返るように、チームメートの主戦投手・伊藤翼咲(現・日本製鉄東海REX)ばかりに注目が集まった。
しかし、大学でプレーが光りだした。「プロの捕手の動画を見るなど、研究はずっと続けてきました。同じリーグ内に良い捕手が多く、参考にしました」とスキルを高めた。昨年、チームの先輩投手・久保田淳希(現・セガサミー)が注目を集めたが、今度は高校時代と異なり、その球を受ける上地もしっかりプロの目にとまった。
ドラフト候補は身長が高い選手が多い中、小柄でも能力をアピールした上地も、可能性を見逃さないNPBスカウトもさすがだ。ちなみに、上地が目標とする“甲斐キャノン”も170センチと上背がなく、育成選手からスタートした。上地は「高い技術を盗むことが好き。プロに行くことができたら、その特技を生かし這い上がりたい」と端正なマスクを一層引き締める。
文・写真=尾関雄一朗